前世王子アイドルグループ~僕たちは君の一番星になりたい☆。.:*・゜

 夏休みが過ぎた。

 今、放送室には僕とみずっきくんがいた。今日は夏休みに撮影して編集も終わった映像を昼休みに放送する。

「今から放送する映像は、撮影も、録音も禁止だからね! インターネットへの投稿も禁止だよ。約束だよ! 守ってくれないと、泣いちゃうかも……」

 今日はみずっきくんが放送前に注意事項を伝えた。一応伝えたけれど、こないだ教えてもらった作戦通り、きっと注意しても再びSNSに載せる人が出てくる。それを利用して、意図的だけど意図的ではないと見せかけながら、さりげなく僕のインターネット露出を増やそうという作戦だった。

「いつきん、今から映像流すけれど大丈夫?」

 みずっきくんはマイクを一旦オフにすると、僕のことを気にしてくれて尋ねてくれた。

「うん、反応が緊張するけれど、大丈夫だよ!」
「そっか、よかった!」

 最初に拡散された時はマイナスな気持ちだらけだったけど、今回は僕への反応は正直怖いけれど、あの時よりも平気だ。万が一嫌なことに遭遇しても、僕にはプリレボメンバーがついているし。

 再びマイクがオンになる。

「じゃあ、初公開映像、行くよ! エンタメ特別放送部の力作だから一秒も目を離さないで画面を見てね!5、4、3、2、1、スターーートッ!」

 最初は無音の状態、夜空の風景だけでタイトルがドンと現れた。

『星たちは生まれ変わる』

~♪

 迷い続けていた
 ここに来てもいいのか
 君がいいよと言ってくれるのなら
 僕はずっとここにいるよ

 今度は君を守りたい~



 なんと、歌の一番初めは僕のソロだった。
 そたくんの愛のムチを受け、泣きながらレッスンした歌。そのお陰で、他のメンバーより歌唱力は劣るものの、自分でも聞いていられるレベルだった。


歌の始まりと同時に、撮影旅行の後にスタジオで別撮りした映像が流れる。プリレボの、僕以外のメンバーが前世の姿で輪になり、たわむれている風景。

 途中で「おいで!」と、四人が僕を受け入れてくれる。そして僕は、はにかみながらみんなに近づいて行き、そたくんの手を掴んだ。

 そして先日撮影した山のシーンに変わっていく。

 前世の姿をした僕たちが、生まれ変わった姿の僕たちの背中を押し、
 生まれ変わった僕たちが山に登る姿を、前世の僕たちが見守り、
 生まれ変わった僕たちは頂上に着くと空を見上げた。
 そして、目的達成して満足気な生まれ変わった僕たちを、前世の僕たちが見つめた。


~♪

僕たちは生まれ変わったんだ~

~♪

 歌が終わると同時に、前世の僕たちは微笑み合いながら、消えた。

 そして映像は終了した。

「すごくいいよね~」
「よすぎる!」

 僕たちは自分たちの映像を褒める。ふたりでしばらく褒めすぎていると、テンションが上がってきた。この映像を観る度に、僕は涙が出そうになるくらい、感動していた。とにかく感動した!!!

 もっと広まるべきかもしれない。
 広まるべきだ!

――早く誰か、SNSにアップして?
――早く拡散されて、広がって!

と、思ってきたけれど、予想外に拡散されなかった。

 エンタメ特別放送部のアンケートボックスの中は前回のように、用紙がはみ出るくらい大量にお褒めの言葉が入っていた。

 それはとても嬉しいのだけど、どうして毎日チェックしているのに、映像の拡散されている気配は少しも感じないのだろう……と、寂しくなってきた時だった。SNSで映像の話題を見つけた。

『あのですね…うちの学校でですね、プリレボの神映像がね…手元にあるので、載せたいんですよ。でも載せたら、泣いてしまうって、みずっきくんご本人が(苦しみの顔文字)』

 みずっきくんが、泣いてしまう?
 
 どういうことか分からなかったから、直接プリレボ城で夜ご飯をみんなで食べている時、隣に座っているみずっきくんに聞いてみることにした。

「あっ、放送する時の注意事項の時に言ったかも!」
「何を?」

 僕はみずっきくんの注意事項を一切覚えていない。映像がよい!と感動した記憶しかない。

「たしか、放送する映像は撮影も録音もインターネットへの投稿も禁止~約束! みたいなこと言ったあとに、守ってくれないと泣いちゃうって……」
「それだ!」

「だからか! どうして作戦が上手くいかないんだろうって考えてたんだけど、分からなかった!」

 話を聞いていたそたくんも反応した。

 ご飯を食べ終わると、すぐにあの書き込みをみんなに見せた。

「これなんだけど……えっ、コメント数すごい!」

 コメント数が、千を超えている!

『見たいけど、みずっきくんが泣いちゃうのなら見ないほうがマシだよ(なみだ)』
『こっそりDMでよろしくお願いします』
『みずっきくん泣かせたらダメ!載せたらダメ!』
『みずっきを悲しませて泣かす人は敵とみなす!』

……

 すごい。

 みずっきくん泣かせたらダメ軍団が溢れている!

 もしも僕がまだ、ただのファンであったのなら、同じようにみずっきくん泣かせたらダメ軍団に入隊し、このコメントの中にお邪魔していただろう。

 世界のみずっきくんファンにとって、みずっきくんの嬉しみの涙は宝物、そして悲しみの涙は毒なのだ。

「どうしよう……僕の発言のせいで、いつきんのためのせっかくの作戦が失敗しちゃう。僕はいつもこうなんだ……迷惑かけてごめん」

 あぁ、今、目の前でみずっきくんが、まさに涙を流そうとしている。

 僕は必死に考えた。脳の全てをフル回転させて。作戦が上手くいく方法……いや、みずっきくんを泣かさない方法を。

「あ、あの、よい方法があります!」

 僕は控えめに左手を上げながら、みんなに今、隠していた秘密を打ち明ける決心をした。