前世王子アイドルグループ~僕たちは君の一番星になりたい☆。.:*・゜

 夏休みもちょうど中間地点に差し掛かっていた。レッスンと同時進行で学校の宿題をしなければならない。今、僕はみずっきくんの部屋で一緒に宿題をしていた。

「あっ、そうだ。いつきん、手を出して?」

 僕は言われた通りに手のひらを差し出した。すると小さい何かを上に乗せられた。

「これは?」
「僕のグッズの新作だよ! 次のライブで売るの」

――みずっきくんから直接手渡された!!

 嬉しくなって気持ちが舞い上がりすぎた。
 手のひらにちょこんと乗っているのは、中にキラキラな透明の石が入った、水色の半透明な巾着袋だった。

「みずっきくん、ありがとう! すごく嬉しい!」
「喜んでくれてよかった! 僕の癒しパワーを封じ込めたお守りだよ! いつきん、これで癒されながら頑張れ!って、僕の気持ちだよ」
「もう癒されてきた~! 本当に大切にするね!」
「そんなに喜んでくれて嬉しいな! 飲むと元気が出るとバズった『みずっきのお水』もあげちゃう~」

 みずっきくんは部屋の隅に置いてあった箱を開けた。みずっきくんが可愛いイラストになって載っているラベルのペットボトルを三本も出して、机の上に並べてくれた。

「ありがとう~、ありがとう~!」

 僕はペットボトルに向けて両手を合わせて拝んだ。

「あっ、そうだ。今後いつきんグッズも販売されるよね! 一緒に考えようね!」
「僕のグッズか……考えたい。僕じゃなくて、僕たちプリレボのグッズでもいいのかな?」
「もちろん! あのね、プリレボ城に初めて来た時にみずっきくんたちが色違いのスウェット着ていて、僕もファンとしてお揃い欲しいなって思ってね……」
「いいね!」

 宿題をしながら会話をして安らいでいる時だった。しーおんくんが突然部屋に入ってきた。

「明日から、におわせ旅行に行くから、二泊三日分の荷物を準備して?」
「におわせ旅行? におわせって、恋人がいるよ!みたいな雰囲気をだすやつ?」

 みずっきくんは眉を寄せながら尋ねた。

「違うよ~。いつきんのだよ」
「僕のにおわせ?」
「しーおんくん、その説明分かりづらいかも」

 そたくんも中に入ってきて説明してくれた。

 話を詳しく聞くと、エンタメ特別放送部の撮影に行くらしい。

エンタメ特別放送部で最初に制作した映像は、学校限定だったにも関わらず、ファンによってインターネットに大拡散された。あの時はまだ、僕は一生一般人として生きていく予定だったから、予想外の露出に悩んだ。

また今回も「学校限定だからインターネットに載せないでね」と伝えても、きっと再びSNSに載せる人が出てくるだろう。今回は、あえてその拡散を狙うらしい。僕の露出を、意図的だけど意図的ではないと見せかけながら増やそうという作戦だった。

「同時にプリレボに新メンバー加入?的な噂も流しておくよ」
「そっか、噂を流しておけば、新メンバーって、誰?きっと学校の放送部のあの人だよね?からの、ライブでサプライズ発表した時にやっぱり予想が当たった!みたいな流れになるのかなぁ」
「みずっき、正解!」
「やったぁ!」
「完全無名なまま、新メンバーをサプライズ発表しても、誰?で終わっちゃうからね。発表までは、公式なメディア以外で知名度を上げていこうと思う。いつきんなら注目されるだけでファンが増えていくと思うし」
「僕にファンができるのかな……」
「もう、何人かファンはいると思うよ。とりあえず、衣装もヘアメイクも同伴するから、お泊まりセットだけ準備する感じで大丈夫だからね」

 ちょっと難しい話だったけど、僕はどれも本気でやるだけだ。

――プリレボと旅行。どんな旅になるのだろう。楽しみだなぁ!



 二泊三日の旅行は始まった。

 朝、マネージャー河合さんが運転する車に乗り込むと、さらさらっと描かれた雰囲気だけど、とても上手な絵が描いてある絵コンテが配られた。しーおんくんが描いたらしい。

 テーマは『生まれ変わる日』

 生まれ変わる日かぁ……。僕以外のメンバーは前世の記憶が残っている。みんなは前世と今の記憶を比べたりするのかなぁ。というか、前世が王子だったって、どんな気持ちなんだろう。僕だけ前世の記憶がないから知らなくて、僕だけ前世が王子ではないかもって、なんか少し寂しいかも。

 いや、ダメだ。これから大切な撮影なのに。

 僕は目をギュッと閉じると明るい気持ちに入れ替えようとした。

 今日泊まる旅館に着いた。車から降りるとスタッフさんたちがいる。

「おはようございます!」と他のメンバーたちが次々と元気よく挨拶をしていたから、僕もみずっきくんのそばから離れないようにしながら、真似をして挨拶をした。

「なんか、エンタメ特別放送部の撮影なのに、人多いね?」
「あぁ、今日の撮影は学校ではもちろんだけど、サプライズ発表の日のライブや商業でも使う予定らしいよ」
「えっ、放送部だけじゃないんだ!」

 話を聞くと僕はなんとなく、背筋を伸ばした。

「本日は撮影でお世話になります。よろしくお願いいたします!」
「丁寧な子たちね~! よろしくね~!」

 プリレボメンバーみんなで、お世話になる旅館の方々に挨拶をすると、僕たちは泊まる五人の部屋へ。和室でとても広い。はしゃいで、飛び跳ねた。

「夜、ここでもプライベート撮影するから散らかさないようにね! 特に、そこのふたり」と、僕とみずっきくんが指をさされた。

「え~、散らかさないよ~」とみずっきくんはぷうっと口をふくらませた。

 みずっきくんの部屋は普段散らかっているから言われても仕方ない。けど、僕は部屋を散らかさないのにな……。と思いつつも、言わずにそっと心の奥に気持ちを押し込んだ。

 別の部屋へ案内されると、撮影のスタッフさんが数人いた。テーブルの上にはお菓子や飲み物もたくさん置いてある。

「ここはプリレボ控え室になるから、いつ呼ばれてもいいように、用事ある時以外はここにいてね。他のところはあんまりうろちょろしないように」

 再び僕とみずっきくんをキッと睨むそたくん。

 正直、撮影していない時間あちこちさまよいたいなぁと思っていたけれど、大人しくしていよう。

 この部屋で着替えとヘアメイクも行われた。先に他のメンバーが。王子たちがさらに王子に変身していく。僕は最後に変身する。そして僕の順番が来た。

 担当してくれるのは、若くて綺麗なお姉さんだった。

 ヘアメイクされている間はずっと緊張していた。目元のメイクをされる時は、目の中にメイク道具が入らないか不安になり、わずかに震えもした。

「次は衣装もヘアメイクも、もっと派手になるからね。ちょっと動きづらくなるけれど、すごく素敵になると思う! 楽しみだね」
「あれ? 衣装はこれだけじゃないんですか?」

 お姉さんと会話していると、そたくんが咳払いをした。お姉さんは一瞬ハッとした表情をすると笑顔に戻り「あっ、これだけだったわ」と言い直した。
 
 今日は完全にお揃いではなく、フリフリが付いている、各イメージにデザインされた、白を基調とした王子風の制服衣装だった。各イメージカラーの色もワンポイントとしてどこかに入っている。全員の衣装の肩には小さな羽がたくさんふわっと付いていた。全体に金色の細かいキラキラが散りばめられていて、僕も、もしかして輝いているのかな?なんて錯覚に陥る。

 プリレボの衣装を身にまとうと、気が引き締まる。

 そして準備を整えると始まった。
 山登りが――。