ダンス部屋を覗くと、れんくんはテンポの速い曲に合わせて一生懸命ダンスを練習していた。
集中しているから、邪魔しちゃいけないかな?
そっとれんくんの練習姿を見つめた。カッコよすぎてぽーっとなる。れんくんの後ろ姿をしばらく入口から見つめていると、れんくんの正面にある鏡に映ったれんくんと目が合った。
僕はささっと隠れた。
「いや、さっきからいるの、バレてるし」
れんくんに話しかけられると、僕は恐る恐る顔をひょいと出す。
「何か、用事?」
れんくんはタオルで汗を拭きながら尋ねてきた。
「あ、あの……こないだ撮影した映像の編集が完成したので、大きな画面で一緒に観ませんか?というお誘いでした」
「……分かった。じゃあ振り付けひとつ確認してからそっちに行くわ」
「わ、分かりました」
れんくんはペットボトルの水を飲み、再び鏡に向かうと踊り出した。なんとなく僕も、今踊っているれんくんのダンスを真似てみる。
手をさっさっさとして、足をクロスして片方の足を横へ移動させて……あぁ、さっぱり分からないし、素早い動きに体がついていかない。
「まず、最初の動きが違うな……」と、いつの間にか僕のダンスを見ていたれんくんに指摘された。見られていたことに驚くと、慌てて動きを止めた。
「あっ、ごめんなさい」
僕は一歩後ろに下がる。
「別に謝られるようなことはしてないけど」
「……いや、お邪魔してしまったかなと思い」
「とりあえず、俺の後ろに立って?」
「えっ?」
れんくんは僕が分からなかった今のダンスをゆっくりと踊ってくれた。僕もなんとなく真似をしてみる。同じ振り付けを何回も繰り返した。
「そこは、リズムがタンタタタンだ」
「こ、こうですか?」
「うん、そう。出来たじゃん」
何、今のこの風景。
僕は今、プリレボの中で一番ダンスの上手なれんくんからダンスを教わり、さらにふたりで動きを合わせて確認している。というかいつもの塩対応ではなく、砂糖が少し混ざったよう優しみある対応をしてくれて、僕は涙が出そうになった。
「いや、泣かなくてもいいから。初めは誰でもできないから」
泣きそうな理由を勘違いされて励まされた。僕は否定も肯定もせずに、涙を流さないようにぎゅっと顔に力を込める。
「れんくんも最初は踊れなかったんですか?」
「……いや、俺は最初から踊れた」
初めは誰でもできないなんて言っていたのに、さすがれんくん!
「ですよねっ! れんくんは上手に踊れるのに、ダンスの練習をたくさんしていてすごいです!」
「こんなことが、すごいのか?」
僕は何回も強く頷いた。
「まぁ、練習すればするほどダンスは上手くなって楽しいし、小さい頃から息をするような感覚で練習をしてきたから、俺にとっては当たり前のことなんだけど――……」
もしかして、ダンスを通せば、れんくんと仲良くなれるのかな?
「あの、ご迷惑でなければもう少しダンスを教えていただけないでしょうか?」
真剣にお願いすると、れんくんがフッと、わずかに笑った。
――やっぱり仲良くなる方法は、間違っていない!
僕たちはしばらくダンスを一緒に踊っていた。
「あれ? れんくん呼びにいったはずなのに、一緒に踊ってたの?」
三十分ぐらい経った時、みずっきくんが迎えに来てくれた。
編集部屋に戻ると、カーテンが閉められ、部屋は暗くなっていた。僕たちはそたくんが並べてくれた椅子に座った。そして映像が再生された。
大きい画面で編集した映像が、プリレボの姿が……! ぶぁっと心の奥から何か熱いものが溢れてくる。
°・*:.。.☆
~♪
僕たちは並んで前に進んでいく
陽さえも僕たちについてきてくれる
僕たちアオハルを生きる
無敵な煌めく星たちさ~
……
……
これからも立ち止まらずに進むんだ
青い空を仰~ぎな~がらっ♪
~♪♪♪
°・*:.。.☆
約四分くらいの映像は終わった。
ぽろぽろぽろぽろ……。
涙が止まらない。
「えっ? いつきん、どうしたの? 大丈夫?」
「大丈夫じゃないかもです。もう、感動しすぎてしまいました~」
そたくんに聞かれると、なんとか僕は震える声で返事をした。
本当に、本当によかった!
震えが止まらないほどに良い。こんな身体の現象は初めてだ。
「いつきん、結構プリレボメンバーに馴染んでいたよね」
「うん、そたくんと同じこと思ってた!」
余韻に浸っていると、僕の話題が。そうだった。今流れていた映像には、プリレボの中に僕も混ざっていたのだった。急に映像の中の自分を、しかもこんな大きな画面でプリレボのメンバーに見られていたことを意識し、恥ずかしくなってきた。
「いつきんはさ、メガネを外してヘアメイクをしたら、ビジュアル面で結構いいレベルまでいくよね」
「うんうん。あっ、ここのいつきんも良い! 陽の光に当たって輝いている姿がすごく可愛い!」
いつの間にか再び映像が流れていて、映像を見ながらそたくんとみずっきくんが僕の分析をしている。
僕の話題は、もうやめて~!
と、そんなこんなで何とか無事に?編集と鑑賞会は終わった。夕方家まで送ってくれるマネージャーの河合さんがお城に到着すると、僕は寂しい気持ちになりながら帰り支度を始めた。
「今日は最高に充実した一日でした。みなさん、ありがとうございました」
僕は玄関で深々お辞儀をした。
ありがたい気持ちが溢れ出し、お辞儀をした頭を戻せなくなっていると「お辞儀長すぎだから、頭を上げて」と、そたくんが指示を出してくれた。
「もう帰っちゃうんだ? いつきんも今日から一緒に住めばいいのに」
みずっきくん、僕も住みたいと思う。でも、もしも万が一、一緒に住むことになったら僕はどうなってしまうのだろうか。毎日幸せだと思うけれど、同時に毎日緊張して……本当にどうなるのだろう。
「いやいや、今日からとか……そんなに簡単に住めるわけじゃないし」
そたくん、そうですよね。一緒に住む妄想を実はしたことがありますが、現実的には無理な話なのですよね。
そたくんとみずっきくんが会話をしている姿を見つめていると、ふと視線を感じた。その視線の主は、れんくんだった。
れんくんとも、もっと会話がしたいな――。
「れんくん、今日はダンスを教えてくれてありがとうございました」
「あぁ……」
いつも通り、れんくんはクールな反応をした。
もっともっと会話、いや交流がしたい!
「あの、もしご迷惑でなければ、またダンス教えてくれませんか? もっと上手くなりたいです」
「……うん、分かった」
やった!!
れんくんが前向きな返事をしてくれた!
そたくんとみずっきくんもマネージャー河合さんと共に家まで送ってくれるらしく、先に玄関から出ていくと車に乗りこんだ。
玄関に立っていたれんくんにお辞儀をすると、外の方向を向く。ドアが完全に閉まる時だった。
「俺もさっきの映像観ていて、葉月がプリレボに馴染んでいると思ったし……」
「えっ?」
僕はれんくんの方に振り向き、閉まりかけたドアを急いで開けておさえた。
「そんなにダンスを頑張りたい気持ちがあるなら……まだ完全に受け入れられないけれど、考えてもいいかもな。葉月がプリレボに、入ること……」
れんくんの言葉を聞くと、心臓が強くドクンとした。
いや、でもダンスをやりたいのは、れんくんともっと交流をしたいからで、でも――。
「あ、ありがとうございます! 頑張ります!」
もらえると少しも思っていなかった言葉に対して、なんて言葉を返せば良いのか全く思いつかなかった。だから、頭の中がわけ分からなくなってきたから、お礼と決意をアピールすると、早々ドアを閉めて、れんくんの視界から僕は消えた。
今のは、返事になっていたのだろうか。
きっとなっていた、はず。
今、ふと考えてしまった。図々しいって、分かっている。だけど――。
完成された映像、そして今のれんくんの言葉。
手の届かない存在でずっと憧れていたプリレボのメンバーと、もっと並びたい、並んでみたいって、思ってしまった。
集中しているから、邪魔しちゃいけないかな?
そっとれんくんの練習姿を見つめた。カッコよすぎてぽーっとなる。れんくんの後ろ姿をしばらく入口から見つめていると、れんくんの正面にある鏡に映ったれんくんと目が合った。
僕はささっと隠れた。
「いや、さっきからいるの、バレてるし」
れんくんに話しかけられると、僕は恐る恐る顔をひょいと出す。
「何か、用事?」
れんくんはタオルで汗を拭きながら尋ねてきた。
「あ、あの……こないだ撮影した映像の編集が完成したので、大きな画面で一緒に観ませんか?というお誘いでした」
「……分かった。じゃあ振り付けひとつ確認してからそっちに行くわ」
「わ、分かりました」
れんくんはペットボトルの水を飲み、再び鏡に向かうと踊り出した。なんとなく僕も、今踊っているれんくんのダンスを真似てみる。
手をさっさっさとして、足をクロスして片方の足を横へ移動させて……あぁ、さっぱり分からないし、素早い動きに体がついていかない。
「まず、最初の動きが違うな……」と、いつの間にか僕のダンスを見ていたれんくんに指摘された。見られていたことに驚くと、慌てて動きを止めた。
「あっ、ごめんなさい」
僕は一歩後ろに下がる。
「別に謝られるようなことはしてないけど」
「……いや、お邪魔してしまったかなと思い」
「とりあえず、俺の後ろに立って?」
「えっ?」
れんくんは僕が分からなかった今のダンスをゆっくりと踊ってくれた。僕もなんとなく真似をしてみる。同じ振り付けを何回も繰り返した。
「そこは、リズムがタンタタタンだ」
「こ、こうですか?」
「うん、そう。出来たじゃん」
何、今のこの風景。
僕は今、プリレボの中で一番ダンスの上手なれんくんからダンスを教わり、さらにふたりで動きを合わせて確認している。というかいつもの塩対応ではなく、砂糖が少し混ざったよう優しみある対応をしてくれて、僕は涙が出そうになった。
「いや、泣かなくてもいいから。初めは誰でもできないから」
泣きそうな理由を勘違いされて励まされた。僕は否定も肯定もせずに、涙を流さないようにぎゅっと顔に力を込める。
「れんくんも最初は踊れなかったんですか?」
「……いや、俺は最初から踊れた」
初めは誰でもできないなんて言っていたのに、さすがれんくん!
「ですよねっ! れんくんは上手に踊れるのに、ダンスの練習をたくさんしていてすごいです!」
「こんなことが、すごいのか?」
僕は何回も強く頷いた。
「まぁ、練習すればするほどダンスは上手くなって楽しいし、小さい頃から息をするような感覚で練習をしてきたから、俺にとっては当たり前のことなんだけど――……」
もしかして、ダンスを通せば、れんくんと仲良くなれるのかな?
「あの、ご迷惑でなければもう少しダンスを教えていただけないでしょうか?」
真剣にお願いすると、れんくんがフッと、わずかに笑った。
――やっぱり仲良くなる方法は、間違っていない!
僕たちはしばらくダンスを一緒に踊っていた。
「あれ? れんくん呼びにいったはずなのに、一緒に踊ってたの?」
三十分ぐらい経った時、みずっきくんが迎えに来てくれた。
編集部屋に戻ると、カーテンが閉められ、部屋は暗くなっていた。僕たちはそたくんが並べてくれた椅子に座った。そして映像が再生された。
大きい画面で編集した映像が、プリレボの姿が……! ぶぁっと心の奥から何か熱いものが溢れてくる。
°・*:.。.☆
~♪
僕たちは並んで前に進んでいく
陽さえも僕たちについてきてくれる
僕たちアオハルを生きる
無敵な煌めく星たちさ~
……
……
これからも立ち止まらずに進むんだ
青い空を仰~ぎな~がらっ♪
~♪♪♪
°・*:.。.☆
約四分くらいの映像は終わった。
ぽろぽろぽろぽろ……。
涙が止まらない。
「えっ? いつきん、どうしたの? 大丈夫?」
「大丈夫じゃないかもです。もう、感動しすぎてしまいました~」
そたくんに聞かれると、なんとか僕は震える声で返事をした。
本当に、本当によかった!
震えが止まらないほどに良い。こんな身体の現象は初めてだ。
「いつきん、結構プリレボメンバーに馴染んでいたよね」
「うん、そたくんと同じこと思ってた!」
余韻に浸っていると、僕の話題が。そうだった。今流れていた映像には、プリレボの中に僕も混ざっていたのだった。急に映像の中の自分を、しかもこんな大きな画面でプリレボのメンバーに見られていたことを意識し、恥ずかしくなってきた。
「いつきんはさ、メガネを外してヘアメイクをしたら、ビジュアル面で結構いいレベルまでいくよね」
「うんうん。あっ、ここのいつきんも良い! 陽の光に当たって輝いている姿がすごく可愛い!」
いつの間にか再び映像が流れていて、映像を見ながらそたくんとみずっきくんが僕の分析をしている。
僕の話題は、もうやめて~!
と、そんなこんなで何とか無事に?編集と鑑賞会は終わった。夕方家まで送ってくれるマネージャーの河合さんがお城に到着すると、僕は寂しい気持ちになりながら帰り支度を始めた。
「今日は最高に充実した一日でした。みなさん、ありがとうございました」
僕は玄関で深々お辞儀をした。
ありがたい気持ちが溢れ出し、お辞儀をした頭を戻せなくなっていると「お辞儀長すぎだから、頭を上げて」と、そたくんが指示を出してくれた。
「もう帰っちゃうんだ? いつきんも今日から一緒に住めばいいのに」
みずっきくん、僕も住みたいと思う。でも、もしも万が一、一緒に住むことになったら僕はどうなってしまうのだろうか。毎日幸せだと思うけれど、同時に毎日緊張して……本当にどうなるのだろう。
「いやいや、今日からとか……そんなに簡単に住めるわけじゃないし」
そたくん、そうですよね。一緒に住む妄想を実はしたことがありますが、現実的には無理な話なのですよね。
そたくんとみずっきくんが会話をしている姿を見つめていると、ふと視線を感じた。その視線の主は、れんくんだった。
れんくんとも、もっと会話がしたいな――。
「れんくん、今日はダンスを教えてくれてありがとうございました」
「あぁ……」
いつも通り、れんくんはクールな反応をした。
もっともっと会話、いや交流がしたい!
「あの、もしご迷惑でなければ、またダンス教えてくれませんか? もっと上手くなりたいです」
「……うん、分かった」
やった!!
れんくんが前向きな返事をしてくれた!
そたくんとみずっきくんもマネージャー河合さんと共に家まで送ってくれるらしく、先に玄関から出ていくと車に乗りこんだ。
玄関に立っていたれんくんにお辞儀をすると、外の方向を向く。ドアが完全に閉まる時だった。
「俺もさっきの映像観ていて、葉月がプリレボに馴染んでいると思ったし……」
「えっ?」
僕はれんくんの方に振り向き、閉まりかけたドアを急いで開けておさえた。
「そんなにダンスを頑張りたい気持ちがあるなら……まだ完全に受け入れられないけれど、考えてもいいかもな。葉月がプリレボに、入ること……」
れんくんの言葉を聞くと、心臓が強くドクンとした。
いや、でもダンスをやりたいのは、れんくんともっと交流をしたいからで、でも――。
「あ、ありがとうございます! 頑張ります!」
もらえると少しも思っていなかった言葉に対して、なんて言葉を返せば良いのか全く思いつかなかった。だから、頭の中がわけ分からなくなってきたから、お礼と決意をアピールすると、早々ドアを閉めて、れんくんの視界から僕は消えた。
今のは、返事になっていたのだろうか。
きっとなっていた、はず。
今、ふと考えてしまった。図々しいって、分かっている。だけど――。
完成された映像、そして今のれんくんの言葉。
手の届かない存在でずっと憧れていたプリレボのメンバーと、もっと並びたい、並んでみたいって、思ってしまった。



