前世王子アイドルグループ~僕たちは君の一番星になりたい☆。.:*・゜

 勢いよく僕とそたくんは振り向いた。

 みずっきくんが「どうしよ~」と、僕たちに助けを求めてきた。

「ど、どうしたの?」

 その慌てぶりに、なんだか嫌な予感がした。

「しーおんくんが曲に合わせてシーンを切っていた時にね、スマホの画面一瞬止まっちゃって。きっと、そのまま待っていればよかったのにね、止まっている間に僕が戻る?矢印ボタンをいっぱい押してしまって……少し経つと動いて、でもいつきんの場面を選ぶ前の、今日の最初の画面になっちゃって、焦って今度は進む?ボタンを連打していたら、真っ黒な画面になっちゃった~」

 みずっきくんの顔が真っ青になっていく。

「みずっき、何か対策あると思うから落ち着きな?」

 そたくんはみずっきくんの背中を優しくなでた。

「うん。ごめんなさい~。僕が矢印ボタン連打したから……」

 スマホを受け取りいじってみるも、電源が落ちたような状態のまま、何も動かなくなっていた。

 もしかしてこのタイミングで僕のスマホが壊れた? 大学生の姉からのおさがりでもう古くなっていたっぽいからなぁ。

「どうしよう。せっかくしーおんくんたちが僕のシーンを選んでくれて、編集してくれていたのに……」
「いつきんが編集してくれたやつも消えちゃっていたらごめんね。僕のせいだ……」
「いや、みずっきくんは悪くないよ。これは、このタイミングでスマホが壊れたのかもしれなくて……」

 みずっきくんのつぶらな瞳から大粒の涙がたくさん溢れてきた。みずっきくんの隣では、しーおんくんはただ黙ってスマホを見つめていた。

そしてしーおんくんは静かな声で呟いた。

「あれ、使おうかな」と。

「あれ、使うのか?」
「えっ? あれを使うの? 大丈夫?」

 そたくんとみずっきくんは真剣なまなざしでしーおんくんをみつめた。

「あれって何ですか?」

 質問するも、誰も僕の言葉を聞いていない。

「大丈夫、だと思う。あれを使う時は誰にも見られてはいけないから、スマホを置いたら、みんな部屋の外に出ていってもらえるかな?」

 僕以外のふたりは深刻そうな表情をして、でも力強く頷いた。部屋から出てドアを閉めると、部屋の前で僕たち三人は待機する。僕は壁にもたれかかり、周りの様子を伺う。

「しーおんくんは今、何を?」
「何をしているのかは、すぐに分かるよ」

 気になる。気になりすぎる――。深刻そうな空気。もしもしーおんくんに何か嫌なことが起こったら?

 待っている間ずっと心配していた。

 少し経つと、閉まっているドアのわずかな隙間から光が漏れてきた。そしてドアが開いた。

「成功した。こ、これ、スマホ。復活させて寿命伸ばしたから。でも寿命少しだけ伸ばしただけだから、新しいの買って、ね……早く、動画も完成、させ、て……あとはよ、ろ、し、く……」

 僕はしーおんくんからスマホを受け取った。
 しーおんくんはそたくんの肩にもたれ掛かると目を閉じた。

「しーおんくん、大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。眠っているだけだから」

 僕が質問すると、そたくんが答えた。

 そたくんとみずっきくんはしーおんくんを寝室へ運んでいく。ひとり取り残された僕は呆然と、何も分からないままふたりが戻ってくるのを待った。

「そうだ、スマホを確認しないと……」

 僕はハッとして、急いでスマホの電源を入れた。すると真っ暗だったスマホの画面が明るくなった。編集していた映像も無事か確認した。これも最後に保存ボタンを押していたのが、みずっきくんが矢印ボタンを連打する前だったから無事だった。

 スマホの寿命はあとわずかしかないと言っていた気がする。

急いで完成させないと。と、プレビューで確認してみた。もう、これで完成と言っても良いと思うほどの完成度だった。

 これを書き出して、ハピネスイチゴのエンタメ特別放送部のグループへ送れば――。

「しーおんくんが命をかけて守ったこの動画、必ず僕も守りますから!」

 僕は気合いを入れて書き出しボタンを押した。

「しーおんくんが命をかけて守ったって……しーおん、生きているし。しーおんは能力を使ったから、疲れて眠っているだけだよ」

 そたくんの声がした。そたくんたちが戻ってきた。

「しーおんくんは本当に大丈夫なのかな……?」
「とりあえず、部屋に戻ろう。完成した映像、すぐに大きな画面で観れるようにしたいよね。その作業をしながらしーおんについて教えるね」
「僕がしーおんくんの秘密を知っても、大丈夫なのか……」
「うん、さっきうっすらまだ意識があって、いつきん心配しすぎてやばそうだったから、教えてもいいよって言ってた」

 そたくんがしーおんくんについて説明をしてくれた。

 しーおんくんは世間が知っている通り、前世は宇宙人王子だった。人間の前世が人間ではない場合も結構あるらしい。だけど宇宙人が前世ということはとても珍しいことだった。しかもだいたいの人は、ほんの一部、少ししか記憶がないらしいのだけど、しーおんくんはたくさん記憶が残っているらしい。気になるところが色々ありすぎる。

 そしてしーおんくんは直感が特に優れていて占いがよく当たるのと、眠ってしまう代わりに不思議な能力が使えるらしい。

 今回僕たちは、しーおんくんの能力に助けられたわけだ。

「しーおんくん、自分を犠牲にしてまで僕たちの動画を守ってくれて……」
「しーおんくん、自分のことに関しては能力を使おうとしないのに、プリレボの誰かが泣いたり困ったりしていると、能力を使って助けてくれようとするの」

 僕とみずっきくんは会話をしながら目をウルウルさせた。

 普段プリレボのメンバーの中では不思議担当のしーおんくん。全く周りの空気を読んでいないと思いきや、実は自分を犠牲にしてまで仲間を想い、助けようとする王子だったなんて――。

「「優しいね~」」

 僕とみずっきくんの瞳が濡れてきた。

「あっ、書き出し終わった! 動画、早速グループに送って!」
「分かりました!」

 目尻の涙を手で拭いながら、グループに動画を送った。そたくんはいつでもこの動画をこの部屋の大きな画面で観られるようにしてくれた。

「あっ、ちょっと待ってほしいです。この動画、れんくんも一緒に観たい……そういえば、れんくんは今どこに?」
「れん? れんはいつもダンスと歌の練習をしているから、今は多分、ダンス部屋にいるよ」

 再生ボタンを押そうとしていたそたくんは、手を止めてくれた。

「れんくんはあんなにダンスも歌も上手なのに、いつも練習しているのかぁ……」

「れんは前世でも中国でトップレベルの仙人になるために、たくさん修行していたらしい」
「前世でも修行を……」
「そう。その時に得た能力がまだ現世でも残っているらしくて。例えば、剣に乗って空を飛んでいるれんの姿をファンが目撃したとか……だかられんの前世の修行の成果が今の歌やダンスにも生かせていると思うし、長時間修行できる能力もそのまま今もあるんだろうね、きっと。まぁ、詳しくは直接れんに聞いてみな?」

プリレボのメンバーは全員ダンスが上手だけど、特にれんくんがキレッキレの動きをしていて一番上手い。正直、元々踊れそうだから、そんなに練習してなさそうだなイメージだった。

 すごいな、れんくんも。
 本当に憧れすぎる!!

 僕はれんくんを誘うために、ダンス部屋に向かった。