たぶん、君は忘れる。


私とは何もかも違うように見えた。

そんな人がいる。




「おはよう」

そう声をかけてくれたのは、同じクラスの萩原深人(おぎわらみひと)

「おはよ」

いつものように少し口角をあげる。
荻原とは、友達なのかと言われれば首をかしげる。

彼と私は天と地だった。

 強いて言えば、同じクラスで音楽が好きだという共通の趣味と共有の友人がいたということ。
委員会で同じになり、たびたび話すことがあっただけ。

 荻原は同じクラスになってから、律儀にあいさつする。
荻原はおはようという際、なぜか目を合わせていた。

 そういうところが女子に受けるのだろうと思う。
本人曰く、告白されたことなんてないらしい。

 絶対にモテるだろうに、と内心そう思いながら、口を開く。
だがすぐに噤み、ごくんと言葉を飲み込む。

 誰にも踏み込まれたくない。
ならば、自分もそうするのが筋だ。

そう思い、荻原のことをよく知らない。
だけど、全く知らないわけではない。

なんとも言えない関係だった。




 今年もまた同じ委員会になってしまった。

「今年もよろしくね」

そう笑いかけてきた荻原。

「よろしく」

 口元が引きつってないだろうか、そんな不安がこみ上げてきて先生の話を聞くのを忘れていた。
気づいたときには教室からは人がいなくなっていた。

「・・・やった」

終わった。
先生の話、聞いてない。
これって荻原に聞かないといけなくなった。
はあぁ、と誰もいないと思ってため息をつく。

それが間違いだった。

「何?どうした」

最近はずっと警戒していたからだろうか。
声を聞いただけで誰だかわかってしまう。

「荻原こそどうしたの」

踏み込ませないように、話を逸らす。

「先生の話、聞いてなかったじゃん」

だから伝えようと思って、と言い横の席に座る。