シナモントーストで朝食を

 しばらく経っても昴生の状況はあまり良くならなかった。講義には間に合ったり間に合わなかったりで、このままではいずれ単位を落としてしまいそうだ。
 世話を焼くのはやめようと決めたけれど、心配する分には構わないはずだ。俺は今日も昼すぎに重役出勤した昴生を呼び止めた。
「昴生、あんまり講義出てないみたいだけど大丈夫か?」
「課題は出してるから問題ねえよ」
「それはそうかもしれないけど……やっぱり朝起きられてないんだろ」
「……」
 昴生は何も答えず、俺の視線から逃れるように顔を背けた。図星ということか。
「遅刻ばっかりしてると信頼されなくなるぞ。もうちょっとがんばれ」
「……分かってる」
「それにちょっと痩せたか? インスタントばっかりだと栄養が……」
「……っ、分かってるよ!」
 珍しく声を張り上げる昴生に驚き、その先の言葉を呑み込む。
「分かってるけど、俺は……」
「昴生……?」
 俯いた昴生の顔を覗き込むと、何かを堪えるように唇を噛み締めていた。
「……お、お前が、もう来ないなんて、いきなり言うから……っ」
「……は?」
 存外、低い声が出た。昴生の目がこちらを向く。
 俺が朝起こさないせいで起きられないとか、俺が飯を作らないせいで食えないとか、そう言いたいのか、こいつは。
「自分ができないことを俺のせいにするなよ!」
 カチンときた瞬間、そう叫んでいた。昴生の表情が強張る。
「俺だって過保護すぎたと思うよ。でもそれじゃお互い良くないって思ったから変わろうとしたんだろ!」
「ひ、陽向……違う、俺は……」
「何が違うんだよ、他力本願もいい加減にしろ!」
 大声を上げたせいだろうか、人が集まってきた。大きな騒ぎになるのは避けたい。
 血が上った頭を落ち着けるようにひとつ息を吐く。昴生は呆然と俺を見つめている。
「……頭冷やしてくる」
 そう言い残し、俺はその場を離れた。振り返ることはできなかった。