シナモントーストで朝食を

 翌日は、たまたま昴生が受けている講義が全て休講だった。昨日の今日で顔を合わせにくかったからちょうどいい。
 一人で大学に向かい、伊藤と鈴木を見つけて頭を下げる。
「昨日はごめん、昴生が空気悪くして」
「いやー、いいって。俺らも無理言っちゃったし。むしろこっちが悪かったよ」
「ていうか、鴫野先輩が謝ることじゃなくないですか?」
「でも俺が連れていったせいだから」
「行くかどうか決めたのは鷺森先輩ですよね。鴫野先輩のせいじゃないと思いますよ」
「そうかな……」
 昴生を巻き込んだ俺にも責任があると思っていたけれど、違うのだろうか。確かに最終的に意思決定したのは昴生自身だけど。
「なあ、鷺森って昔からあんな感じなの?」
 伊藤からの問いかけに、俺は頷いた。
「気難しい奴ではあったよ。子どもの頃はもっと人見知りだったけど」
 俺と昴生は保育園の年少クラスからの付き合いだ。いつも一人でつまらなさそうに遊んでいた昴生のことが気になり、俺から声をかけた。最初は警戒されてなかなか心を開いてくれなかったけれど、何度も話しかけるうちに少しずつ打ち解けていった。それから今までずっと行動をともにしている。
 昴生はあんな性格なので、度々人間関係のトラブルを起こし、その都度俺が仲裁したりフォローしたりしていた。大学三年にもなってこの状況が続いているのはどうなんだと思わなくもないけれど、どうしても放置できないのだ。
 それになにも俺だって無償で奉仕しているわけじゃない。勉強は昴生の方ができるので、昔からテスト勉強や課題で困った時には昴生に頼っていた。今でも試験前にはノートやレジュメのまとめを手伝ってもらっているし、料理を作ってやる時の食費は昴生持ちだ。
 俺の話を聞き終えた二人は信じられないものを見るかのような目を俺に向けた。
「鴫野先輩、過保護すぎ」
「お前はあいつのお母さんかよ」
「お節介にも程があります」
「距離感バグってる」
 友人たちの容赦のない言葉がぐさぐさと胸に突き刺さる。
「そんなにヤバい……?」
「ヤバいというかあり得ないですね。こんなにお節介な人見たことないです」
「あんまり甘えさせると一生わがまま王子のままだぞ」
 二人の言う通り、俺は世話を焼きすぎる傾向があると思う。もしも俺の過保護さが昴生の性格の尖り具合に拍車をかけていたんだとしたら……。
「俺、昴生に構いすぎてたのかな……」
 ぽつりと呟くと、二人は神妙な面持ちで頷いた。
「もうちょっと独り立ちさせた方がいいと思います」
「あれじゃでかい赤ちゃんだ」
 でかい赤ちゃん。一理あるかも、と思ってしまった。
「なるほど……分かった、とりあえず色々試してみるよ」