オカ研部長は最強霊媒師なのに幽霊が視えない

『東京都葛飾区の踏切で男性ひとりが電車に撥ねられ、死亡しました』

 真っ暗な部屋に、テレビの明かりだけがついている。
 僅かな明かりが照らした部屋には、切られた新聞紙やネットニュースのコピーが散乱していた。

『昨日午後6時過ぎ、○○線の踏切で快速電車が男性ひとりを撥ねました。踏切内で立ち止まっていた森本秀樹さんが撥ねられ、病院へ搬送されましたが、死亡が──』

 22時のニュースが流れる中、膝を抱えて画面を凝視する男がいた。見開かれた目は充血し、どんどん息が荒くなっていく。
 身もだえた男は床に達磨のように倒れた。両手首と両足首がガムテープで縛られている。

「また……なんで……どうなってる……っ」

 縛られた手で頭を掻きむしって、男は子どものように泣き始めた。鼻をすする音が嗚咽になって、震える男の手が床に落ちていたハサミを掴んだ。
 身体の自由が利かない状態でどうにか持ち替えて、自身に刃先を向ける。男が刃先を泣きながら見ると、突然テレビの電源が落ちた。
 真の暗闇に静寂が流れる。



 トン、トン。



 足音。
 そう思える音と気配がした。



 ──バン!!



 部屋のドアが大きな音を立てて閉まる。そのドアは目張りがされて開かないはずのドアだった。
 男は悲鳴を上げて、すぐに「違う、違う!」とハサミを投げ捨てる。その直後、部屋中の家具がガタガタと揺れ始めた。

「やめろ……!……やめて……お願いします……お願い……お願いします……」

 男が床に突っ伏して震えながら懇願する。流れた涙が床に落ちると、家具がピタリと止まった。

 

 トン、トン。



 また足音がした。
 男の目の前に土に汚れたむき出しの脚が立っていた。