オカルト研究会・夏合宿。
1番多忙な菩提寺の予定をベースに組まれた合宿は、8月中旬に一泊二日で無事に開催となった。
俺は部活の合宿など初めてで、昨晩は着替えやおやつ、お小遣いなどを忘れていないか何度も確認して過ごし、目が冴えてしまってよく眠れなかった。我ながら小学生みたいだが、中学の修学旅行は体調不良で欠席しており、友達とのお泊りなんて本当に小学生以来なのだ。
静先輩と菩提寺と3人で新幹線に乗り、2時間ちょっと喋ったりお菓子を交換したりしているうちに滋賀県に到着した。俺と菩提寺は宿の送迎バスを待とうとしたが「暑いしおごるから」と先輩に押されてタクシーに乗り、20分ほどで湖畔の合宿先につく。
「いい場所だね~。肝試しスポットも近いし琵琶湖もすぐそこだし」
「部屋に荷物運んでもらおう。善本、貴重品以外貸してくれ」
静先輩と菩提寺は慣れた様子で迎えに出たスタッフさんに荷物を渡している。一方俺は、合宿先──というか松が寝そべる立派な門構えの旅館を見上げて口を開けていた。
「……こんな綺麗な旅館、家族旅行でも来た事ない……。これ旅行券で足りるんですか……? 絶対高校生の合宿で来るようなところじゃないですよね……?」
「足りる足りる。旅行券はまだ余ってるくらいだし」
先輩は立ち尽くす俺に肩を組んで、俺ごと旅館の中へ入っていく。高そうな調度品が並び、その横で着物姿のスタッフさんが頭を下げていて落ち着かない。
「善本。こいつは本当に金を持ってるから心配いらない。除霊の報酬知ったら腰抜かすぞ」
「い、一体いくら貰ってるんですか」
「秘密。知ったら会社員になった時に僕の年収がチラついて死にたくなっちゃうよ。ま、貰ってはいるけど交通費とか調査費、人件費込々だからぼったくりではない」
俺に対する除霊が1回いくらで取り引きされるものなのか好奇心が暴れたが、無気力な社会人になるのは避けたいのでこれ以上聞くのはやめておく。
先輩は受付の人に「夕飯は18時からで。あと夕飯の後、ちょっと出かけます」と伝え、ポンと手を打った。
「じゃ、さっそく琵琶湖で遊ぼう。みんなちゃんと濡れてもいい着替え持ってきた?」
夏合宿のしおりに『着いたら即琵琶湖に突入。着替えは手持ちで』とあったので、俺も菩提寺も手提げ袋に貴重品と着替えを入れて持っていた。
「用意はしたが、水辺は霊のオアシスなんだろ。善本が危ないんじゃないか」
「そこは僕がしっかり守るって。あ、手はちゃんと繋いで行こうね」
「こ、こんな人目につくところでもう繋ぐんですか」
「結局繋ぐんだから、いつ繋いでも同じだよ」
先輩は言うが早いか俺の手をぎゅっと握って、外に向かって歩き始める。旅館の人たちがこちらを見ている気がして恥ずかしい。
「ほんとに恥ずかしい……」
「何度も繋いでるのに? マコトくんってピュアだよねえ。そこが可愛いとこだけど」
思わず声にも出して呟いたが先輩は全然気にしておらず、むしろ手を持ち上げて周囲に見せつけるようにしてくる。
俺の横を歩く菩提寺は繋がれた手をジッと見て、おもむろに俺の手から荷物を取った。
「あ、別に平気だよ。俺持つから──」
「俺とも繋ごう。……変な3人組になれば、恥ずかしくないだろ」
菩提寺は言うが早いか俺の空いた手を握った。先輩と違って硬くて分厚い手が俺の手を包む。
3人で手を繋ぐ姿は確かにふざけている男子高校生たちに見えなくもない、かもしれない。
(でも恥ずかしさ減ったのか、これ……?)
菩提寺の横顔は少し緊張しているように見えて、俺のために無理させているのではと複雑だった。
「なに、仲間外れなの寂しかったか。お兄ちゃんとも繋ぐ?」
「お前と繋ぐわけねえだろ」
先輩が冷やかしても菩提寺は手を離すことはなく、俺たちは3人並んで手を繋いだまま湖畔へと赴くこととなった。
1番多忙な菩提寺の予定をベースに組まれた合宿は、8月中旬に一泊二日で無事に開催となった。
俺は部活の合宿など初めてで、昨晩は着替えやおやつ、お小遣いなどを忘れていないか何度も確認して過ごし、目が冴えてしまってよく眠れなかった。我ながら小学生みたいだが、中学の修学旅行は体調不良で欠席しており、友達とのお泊りなんて本当に小学生以来なのだ。
静先輩と菩提寺と3人で新幹線に乗り、2時間ちょっと喋ったりお菓子を交換したりしているうちに滋賀県に到着した。俺と菩提寺は宿の送迎バスを待とうとしたが「暑いしおごるから」と先輩に押されてタクシーに乗り、20分ほどで湖畔の合宿先につく。
「いい場所だね~。肝試しスポットも近いし琵琶湖もすぐそこだし」
「部屋に荷物運んでもらおう。善本、貴重品以外貸してくれ」
静先輩と菩提寺は慣れた様子で迎えに出たスタッフさんに荷物を渡している。一方俺は、合宿先──というか松が寝そべる立派な門構えの旅館を見上げて口を開けていた。
「……こんな綺麗な旅館、家族旅行でも来た事ない……。これ旅行券で足りるんですか……? 絶対高校生の合宿で来るようなところじゃないですよね……?」
「足りる足りる。旅行券はまだ余ってるくらいだし」
先輩は立ち尽くす俺に肩を組んで、俺ごと旅館の中へ入っていく。高そうな調度品が並び、その横で着物姿のスタッフさんが頭を下げていて落ち着かない。
「善本。こいつは本当に金を持ってるから心配いらない。除霊の報酬知ったら腰抜かすぞ」
「い、一体いくら貰ってるんですか」
「秘密。知ったら会社員になった時に僕の年収がチラついて死にたくなっちゃうよ。ま、貰ってはいるけど交通費とか調査費、人件費込々だからぼったくりではない」
俺に対する除霊が1回いくらで取り引きされるものなのか好奇心が暴れたが、無気力な社会人になるのは避けたいのでこれ以上聞くのはやめておく。
先輩は受付の人に「夕飯は18時からで。あと夕飯の後、ちょっと出かけます」と伝え、ポンと手を打った。
「じゃ、さっそく琵琶湖で遊ぼう。みんなちゃんと濡れてもいい着替え持ってきた?」
夏合宿のしおりに『着いたら即琵琶湖に突入。着替えは手持ちで』とあったので、俺も菩提寺も手提げ袋に貴重品と着替えを入れて持っていた。
「用意はしたが、水辺は霊のオアシスなんだろ。善本が危ないんじゃないか」
「そこは僕がしっかり守るって。あ、手はちゃんと繋いで行こうね」
「こ、こんな人目につくところでもう繋ぐんですか」
「結局繋ぐんだから、いつ繋いでも同じだよ」
先輩は言うが早いか俺の手をぎゅっと握って、外に向かって歩き始める。旅館の人たちがこちらを見ている気がして恥ずかしい。
「ほんとに恥ずかしい……」
「何度も繋いでるのに? マコトくんってピュアだよねえ。そこが可愛いとこだけど」
思わず声にも出して呟いたが先輩は全然気にしておらず、むしろ手を持ち上げて周囲に見せつけるようにしてくる。
俺の横を歩く菩提寺は繋がれた手をジッと見て、おもむろに俺の手から荷物を取った。
「あ、別に平気だよ。俺持つから──」
「俺とも繋ごう。……変な3人組になれば、恥ずかしくないだろ」
菩提寺は言うが早いか俺の空いた手を握った。先輩と違って硬くて分厚い手が俺の手を包む。
3人で手を繋ぐ姿は確かにふざけている男子高校生たちに見えなくもない、かもしれない。
(でも恥ずかしさ減ったのか、これ……?)
菩提寺の横顔は少し緊張しているように見えて、俺のために無理させているのではと複雑だった。
「なに、仲間外れなの寂しかったか。お兄ちゃんとも繋ぐ?」
「お前と繋ぐわけねえだろ」
先輩が冷やかしても菩提寺は手を離すことはなく、俺たちは3人並んで手を繋いだまま湖畔へと赴くこととなった。
