『ホームルーム終わったら、プールサイドに集合!』
帰りのHR中に、静先輩から連絡があった。プールの入り口でピースをしている自撮りが送られてきて、この人HRサボってるんだろうなと思わせた。
「で、ここで何するんだ」
「もちろん除霊だよ。水辺は霊のオアシス。いっぱい集まってくるからね」
菩提寺と共にプールを訪れると、あんなに昼を食べていたのにもう小腹が減っているらしい静先輩はカロリーメイトを食べていた。
俺は「いっぱい食べるんですね」とかそんな雑談をする余裕もなく、周囲に集まってくる靄から逃げるように先輩に近づく。
「早くしませんか。ここ霊の数がすごくて、今にも憑いてきそうで……っ」
「あれ、もう効果切れちゃった? やっぱ今朝のキスじゃ持って半日ってとこか~」
「おい待て。善本に何してんだ、お前」
「おでこにしただけってちゃんと言ってください!」
菩提寺と俺に同時に突っ込まれた先輩──菩提寺にいたっては兄の胸ぐらを掴んでいた──は、悪びれる様子もなくカロリーメイトを食べ切り、手をパンパンと払った。
「じゃ、新入部員のキミたちのためにまず基本から。除霊とは次の3つを指します。①僕が近づくことで霊を逃がす。これは文字通り逃げただけであり、悪霊は他所でまた悪さをする。②僕が霊に接触することで消滅させる。③憑依した霊を憑依された人間に触れることで取り除く。この場合②と同様に接触扱いとなり霊は消滅となる。霊の消滅ってのはこんな感じ」
指を3本立てた先輩が、おもむろに俺に向かって手を伸ばした。
その瞬間、至近距離で俺の顔を凝視していた悪霊がバシュッと消し飛ぶ。まさに消滅だった。今までの霊が逃げる現象とはまったく違っていた。
「触れたかな。消えた?」
「は、はい。消えました」
(指先が掠めたくらいでこんなあっさり……)
改めてその力を目の当たりにすると、あまりにも圧倒的でフィクションじみている。ここまでの力があるのに幽霊が視えないのは、天は二物を与えずということなのかもしれない。
「さて。今の説明を聞いた上で、今回の除霊はどうすると思う?」
「俺と菩提寺でどこに霊がいるか先輩に教えてタッチしてもらう、とか?」
「そんな悠長なことをやってたらいつまで経っても終わらないよ。今日は水泳部の部長を買収して、部活のスタートを30分遅らせてもらってんだ。つまり、あと20分ちょいで霊のオアシスは使えなくなる」
言い終えた静先輩は俺と目が合うと微笑み、菩提寺が渋い顔で腕組みをした。
「……まさか、善本に大量に憑依させてから一気に除霊しようとしてんのか」
「類ってば冴えてるね、その通り!」
「っ、ええ!? それ大丈夫なんですか!? 昨日だって飛び降り寸前だったのに……!」
「僕がいるから大丈夫、大丈夫。学校が霊まみれで1番困るマコトくんを、1番迅速に助けられる手段だよ」
「だとしても危険すぎるだろ。万が一のことがあったらどうする。だいたい──」
菩提寺が先輩の案に苦言を呈す傍ら、俺は急激に脚が重くなるのを感じた。下を見ると、足元の黒い靄から舌が伸び、俺の両脚に絡みついている。
(もう先輩の厄除けが効いてない……)
プールの上を漂う悪霊が、一斉に俺を見た気がした。
先輩の案に乗って一瞬の危険に耐えるか、乗らずにいつ悪霊に乗っ取られるかわからない状態に身を置くか。どっちにしろ憑依からは逃れられないのだから、やるべきことはひとつに思えた。
「……菩提寺、ありがとう。でも俺やるよ。俺のためでもあるし、危なくても最善策だと思う」
俺が言うと、兄に意見していた菩提寺は「本気か?」と鼻にしわを寄せ、意見されていた先輩は拍手をした。
「度胸があるのもマコトくんのいいところだね。本人の承諾も得られたところで、ホントに時間がないから始めるよ」
言いながら、先輩はスラックスのポケットから細長い紙を取り出した。鬼のようなものが逆さまに描かれている。
「なんですかそれ」
「これは有名な神社のお札を、上下左右を反転させて写し書いたもの。正位置で力を発揮するお札を逆位置にすることで、真逆の効果を得られるんだ。簡単に言えば、持ってるだけで霊が大量に集まってくる。これをマコトくんが持って、十分憑依されたかなというタイミングで僕がタッチして一件落着、というわけよ」
持ってるだけで霊を集めるお札を持っている先輩は、その嫌われ体質により霊に狙われている様子はない。しかし言われてみれば、先輩がいるにも関わらずプールに黒い靄が続々と増えていて、お札の力には嫌な信頼性があった。
「準備はいい?」
「……はい。お願いします」
先輩が差し出したお札を受け取る。
途端に指先から悪寒が駆け巡り、足元の悪霊が奇声を上げて脚を締め上げた。
周囲を漂う靄たちが今度こそ俺を一斉に見る。何百個という目玉が大きく開き、数十個の口が汚れた歯を叩き合わせ始めた。
「はい、じゃスタート」
その言葉を合図に先輩が2歩ほど俺から離れた。俺との間合いを見ていた目玉が弧を描き、歯ぎしりしていた口が耳障りな金切り声を上げ、次の瞬間には俺めがけて飛び込んできていた。
「うっ……!」
大量の砂利が全身に当たったような痛みに襲われ、思わず呻きが漏れた。その一撃で終わることはなく、次から次へと砂利が体に当たる。数え切れないほどの悪霊が、俺の中に入ってきているのだ。
少しでも悪霊を避けようと腕で顔を庇ってどうにか立っていたが、突然激しく胃酸が込み上げた。プールサイドに膝をつき咳き込むと、血走った目玉が口から吐き出され、アスファルトにベチャッと音を立てた。
気持ち悪い。
もう立ち上がれなかった。
全身が重い。俺は鉛の塊になってしまったのか。
(これ、このまま、死ぬんじゃ……)
頭の中が死ぬことでいっぱいになっていく。
死ぬ、死ぬ。もう無理だ。やめよう。お手上げだ。辛い。きつい。寒い。痛い。怖い。死ぬ。死にたい、死にたい。
お札を手放したいのに、俺の手は動かない。
菩提寺が「おい、早く祓え!」と先輩を急かす声が聞こえた。でもそれも遠くの方で僅かに聞こえただけで、先輩の返事はわからなかった。
(あっ……水、水がほしい、みず……があれば……)
急にひらめいた。
なんで水が欲しいのかはわからない。
固く閉じていた目を開くと、俺の目の前に靄がいた。いや、前じゃない。俺の中から靄が出ていた。
靄は俺を飲み込むような大きさの手を形作り、こちらを手招く。手招かれるたびに不快感が消え、不思議と体が動いていた。1歩、また1歩と追い求める。
手に追いついたところで、地面が消えて体が浮いていた。
「がはっ……! う、っ……!」
救いの手を追いかけていたはずの俺は、気付けば水の中でもがいていた。水面に出ようとする俺を、靄から伸びた無数の手が水底へと引きずり下ろしていく。
息ができない、息が。
息。
苦しい。
くるしい……。
意識が遠のいて抵抗できなくなった時、上から腕を強く引かれた。強風が全身を巡り、体が急浮上する。
水面に到達し、酸素に触れた俺はまず大量の水を吐いた。続いて肩で息をしながら滲む視界に目を凝らすと、俺の腕を掴んでいるのは俺と同じようにずぶ濡れになった静先輩だった。
「ハァッ、ハァッ……! し、静先輩……!?」
「お、正気に戻ったね」
絶対何十メートルも水中に引きずり下ろされていたはずなのに、俺がいるのは足のつくプールだった。
制服のまま、俺と静先輩はプールに立っていた。
「善本! 大丈夫か! 今タオル取ってくる、待ってろ!」
菩提寺が水泳部の部室へ走っていく。俺はまだ息が整わず、お礼も言えずに手を上げて無事だけをアピールした。
「いや~、着替えないや。どうしよ」
あまり困ってなさそうに笑った静先輩がプールサイドに上がり、俺の手を引いてくれる。
重力と水の重さでアスファルトに倒れるようにして這い上がった俺は、酸素を大きく吸いながらプールと校舎を見渡した。
プールにも校舎にもあれだけいた靄が跡形もなく消え去っている。
「っ、すごい、全部消えてる……」
「すごいのはマコトくんの体ね。大量の霊が集まったせいで、耐性のある類でさえ気分悪くなってたよ。それだけの霊を憑依させられるなんて本当にすごい」
口先だけではなく、静先輩は感嘆した声をしていた。自分の体質が嫌いなことに変わりないが、褒められると悪い気はしなかった。
「ま、でも霊に主導権を握られると希死念慮が捏造されて死に直行しちゃうみたいだね。危ないから、やっぱり普段は憑依されないよう対策した方がいいよ」
「それって……キス以外でも対策できますか?」
「僕とキスするのそんなに嫌なの? ちょっと悲しい……。でもキス以外の方法もあるよ。効果弱くなっちゃうけどね」
先輩はびしょ濡れのシャツを脱いで、雑巾のように絞っている。
水泳部には女子もいるし下を脱ぎ始めたら止めようと思って見やると、胸元から腹部にかけて目立つ傷跡があった。古い傷のようだが、赤みがしっかりと残っている。
「今日はもう疲れてるだろうし、対策方法についてはまた今度。改めてオカ研もとい除霊活動、よろしくね」
先輩に手を取られ握手をされる。
その後すぐにタオルを持った菩提寺が戻ってきて、傷跡については見て見ぬふりとなってしまった。
菩提寺は俺だけに予備の運動着を貸してくれて、くしゃみをしている先輩のことは濡れたまま帰宅させていた。
帰りのHR中に、静先輩から連絡があった。プールの入り口でピースをしている自撮りが送られてきて、この人HRサボってるんだろうなと思わせた。
「で、ここで何するんだ」
「もちろん除霊だよ。水辺は霊のオアシス。いっぱい集まってくるからね」
菩提寺と共にプールを訪れると、あんなに昼を食べていたのにもう小腹が減っているらしい静先輩はカロリーメイトを食べていた。
俺は「いっぱい食べるんですね」とかそんな雑談をする余裕もなく、周囲に集まってくる靄から逃げるように先輩に近づく。
「早くしませんか。ここ霊の数がすごくて、今にも憑いてきそうで……っ」
「あれ、もう効果切れちゃった? やっぱ今朝のキスじゃ持って半日ってとこか~」
「おい待て。善本に何してんだ、お前」
「おでこにしただけってちゃんと言ってください!」
菩提寺と俺に同時に突っ込まれた先輩──菩提寺にいたっては兄の胸ぐらを掴んでいた──は、悪びれる様子もなくカロリーメイトを食べ切り、手をパンパンと払った。
「じゃ、新入部員のキミたちのためにまず基本から。除霊とは次の3つを指します。①僕が近づくことで霊を逃がす。これは文字通り逃げただけであり、悪霊は他所でまた悪さをする。②僕が霊に接触することで消滅させる。③憑依した霊を憑依された人間に触れることで取り除く。この場合②と同様に接触扱いとなり霊は消滅となる。霊の消滅ってのはこんな感じ」
指を3本立てた先輩が、おもむろに俺に向かって手を伸ばした。
その瞬間、至近距離で俺の顔を凝視していた悪霊がバシュッと消し飛ぶ。まさに消滅だった。今までの霊が逃げる現象とはまったく違っていた。
「触れたかな。消えた?」
「は、はい。消えました」
(指先が掠めたくらいでこんなあっさり……)
改めてその力を目の当たりにすると、あまりにも圧倒的でフィクションじみている。ここまでの力があるのに幽霊が視えないのは、天は二物を与えずということなのかもしれない。
「さて。今の説明を聞いた上で、今回の除霊はどうすると思う?」
「俺と菩提寺でどこに霊がいるか先輩に教えてタッチしてもらう、とか?」
「そんな悠長なことをやってたらいつまで経っても終わらないよ。今日は水泳部の部長を買収して、部活のスタートを30分遅らせてもらってんだ。つまり、あと20分ちょいで霊のオアシスは使えなくなる」
言い終えた静先輩は俺と目が合うと微笑み、菩提寺が渋い顔で腕組みをした。
「……まさか、善本に大量に憑依させてから一気に除霊しようとしてんのか」
「類ってば冴えてるね、その通り!」
「っ、ええ!? それ大丈夫なんですか!? 昨日だって飛び降り寸前だったのに……!」
「僕がいるから大丈夫、大丈夫。学校が霊まみれで1番困るマコトくんを、1番迅速に助けられる手段だよ」
「だとしても危険すぎるだろ。万が一のことがあったらどうする。だいたい──」
菩提寺が先輩の案に苦言を呈す傍ら、俺は急激に脚が重くなるのを感じた。下を見ると、足元の黒い靄から舌が伸び、俺の両脚に絡みついている。
(もう先輩の厄除けが効いてない……)
プールの上を漂う悪霊が、一斉に俺を見た気がした。
先輩の案に乗って一瞬の危険に耐えるか、乗らずにいつ悪霊に乗っ取られるかわからない状態に身を置くか。どっちにしろ憑依からは逃れられないのだから、やるべきことはひとつに思えた。
「……菩提寺、ありがとう。でも俺やるよ。俺のためでもあるし、危なくても最善策だと思う」
俺が言うと、兄に意見していた菩提寺は「本気か?」と鼻にしわを寄せ、意見されていた先輩は拍手をした。
「度胸があるのもマコトくんのいいところだね。本人の承諾も得られたところで、ホントに時間がないから始めるよ」
言いながら、先輩はスラックスのポケットから細長い紙を取り出した。鬼のようなものが逆さまに描かれている。
「なんですかそれ」
「これは有名な神社のお札を、上下左右を反転させて写し書いたもの。正位置で力を発揮するお札を逆位置にすることで、真逆の効果を得られるんだ。簡単に言えば、持ってるだけで霊が大量に集まってくる。これをマコトくんが持って、十分憑依されたかなというタイミングで僕がタッチして一件落着、というわけよ」
持ってるだけで霊を集めるお札を持っている先輩は、その嫌われ体質により霊に狙われている様子はない。しかし言われてみれば、先輩がいるにも関わらずプールに黒い靄が続々と増えていて、お札の力には嫌な信頼性があった。
「準備はいい?」
「……はい。お願いします」
先輩が差し出したお札を受け取る。
途端に指先から悪寒が駆け巡り、足元の悪霊が奇声を上げて脚を締め上げた。
周囲を漂う靄たちが今度こそ俺を一斉に見る。何百個という目玉が大きく開き、数十個の口が汚れた歯を叩き合わせ始めた。
「はい、じゃスタート」
その言葉を合図に先輩が2歩ほど俺から離れた。俺との間合いを見ていた目玉が弧を描き、歯ぎしりしていた口が耳障りな金切り声を上げ、次の瞬間には俺めがけて飛び込んできていた。
「うっ……!」
大量の砂利が全身に当たったような痛みに襲われ、思わず呻きが漏れた。その一撃で終わることはなく、次から次へと砂利が体に当たる。数え切れないほどの悪霊が、俺の中に入ってきているのだ。
少しでも悪霊を避けようと腕で顔を庇ってどうにか立っていたが、突然激しく胃酸が込み上げた。プールサイドに膝をつき咳き込むと、血走った目玉が口から吐き出され、アスファルトにベチャッと音を立てた。
気持ち悪い。
もう立ち上がれなかった。
全身が重い。俺は鉛の塊になってしまったのか。
(これ、このまま、死ぬんじゃ……)
頭の中が死ぬことでいっぱいになっていく。
死ぬ、死ぬ。もう無理だ。やめよう。お手上げだ。辛い。きつい。寒い。痛い。怖い。死ぬ。死にたい、死にたい。
お札を手放したいのに、俺の手は動かない。
菩提寺が「おい、早く祓え!」と先輩を急かす声が聞こえた。でもそれも遠くの方で僅かに聞こえただけで、先輩の返事はわからなかった。
(あっ……水、水がほしい、みず……があれば……)
急にひらめいた。
なんで水が欲しいのかはわからない。
固く閉じていた目を開くと、俺の目の前に靄がいた。いや、前じゃない。俺の中から靄が出ていた。
靄は俺を飲み込むような大きさの手を形作り、こちらを手招く。手招かれるたびに不快感が消え、不思議と体が動いていた。1歩、また1歩と追い求める。
手に追いついたところで、地面が消えて体が浮いていた。
「がはっ……! う、っ……!」
救いの手を追いかけていたはずの俺は、気付けば水の中でもがいていた。水面に出ようとする俺を、靄から伸びた無数の手が水底へと引きずり下ろしていく。
息ができない、息が。
息。
苦しい。
くるしい……。
意識が遠のいて抵抗できなくなった時、上から腕を強く引かれた。強風が全身を巡り、体が急浮上する。
水面に到達し、酸素に触れた俺はまず大量の水を吐いた。続いて肩で息をしながら滲む視界に目を凝らすと、俺の腕を掴んでいるのは俺と同じようにずぶ濡れになった静先輩だった。
「ハァッ、ハァッ……! し、静先輩……!?」
「お、正気に戻ったね」
絶対何十メートルも水中に引きずり下ろされていたはずなのに、俺がいるのは足のつくプールだった。
制服のまま、俺と静先輩はプールに立っていた。
「善本! 大丈夫か! 今タオル取ってくる、待ってろ!」
菩提寺が水泳部の部室へ走っていく。俺はまだ息が整わず、お礼も言えずに手を上げて無事だけをアピールした。
「いや~、着替えないや。どうしよ」
あまり困ってなさそうに笑った静先輩がプールサイドに上がり、俺の手を引いてくれる。
重力と水の重さでアスファルトに倒れるようにして這い上がった俺は、酸素を大きく吸いながらプールと校舎を見渡した。
プールにも校舎にもあれだけいた靄が跡形もなく消え去っている。
「っ、すごい、全部消えてる……」
「すごいのはマコトくんの体ね。大量の霊が集まったせいで、耐性のある類でさえ気分悪くなってたよ。それだけの霊を憑依させられるなんて本当にすごい」
口先だけではなく、静先輩は感嘆した声をしていた。自分の体質が嫌いなことに変わりないが、褒められると悪い気はしなかった。
「ま、でも霊に主導権を握られると希死念慮が捏造されて死に直行しちゃうみたいだね。危ないから、やっぱり普段は憑依されないよう対策した方がいいよ」
「それって……キス以外でも対策できますか?」
「僕とキスするのそんなに嫌なの? ちょっと悲しい……。でもキス以外の方法もあるよ。効果弱くなっちゃうけどね」
先輩はびしょ濡れのシャツを脱いで、雑巾のように絞っている。
水泳部には女子もいるし下を脱ぎ始めたら止めようと思って見やると、胸元から腹部にかけて目立つ傷跡があった。古い傷のようだが、赤みがしっかりと残っている。
「今日はもう疲れてるだろうし、対策方法についてはまた今度。改めてオカ研もとい除霊活動、よろしくね」
先輩に手を取られ握手をされる。
その後すぐにタオルを持った菩提寺が戻ってきて、傷跡については見て見ぬふりとなってしまった。
菩提寺は俺だけに予備の運動着を貸してくれて、くしゃみをしている先輩のことは濡れたまま帰宅させていた。
