視える俺と視えない最強霊媒師

「それで……俺は、どうしたらいいんですか」

 ごみが散乱するリビングで、荒い息を繰り返しながらスマホを握り締めた。部屋全体から悪臭がするが鼻を押さえる余裕はない。今にも開きそうなドアから目が離せなかった。
 なんてことはないよくある茶色の扉、その向こう側に異常な“圧”があった。

『だから、僕とキスしたらいいんだよ』
「真面目な話をしてるんです!」

 大きい声を出したら一気に吐き気がした。暑くて寒い。立っているのも精いっぱいだ。
 電話口にえづくと『真面目な話なんだけどなぁ』と残念そうな呟きが聞こえた。

『そこ、汚いでしょ。腐ったごみも多い。そういう場所は気が停滞するから相手に都合がいいんだよ。とりあえず腐ってるものはひとつにまとめて、南にある窓辺に置くこと。あと水回りは入念に拭いて』

 見えていないはずの部屋の様子を言い当てた声は、落ち着いている。
 俺はスマホを耳と肩で挟んで、見つけた適当な紙袋にゴミを入れ始めた。しかし少しでもドアに近づくと眩暈がして手が止まり、遅々として進まない。

『あ、部屋のドアにはお札貼ったんだよね?』
「……はい。でも──」
『僕が到着するまでもうちょっとかかるから。頑張って、マコトくん』

 随分と他人事に聞こえて不安が勝る。でも信用するしかない声が、笑って通話を切った。
 俺は覚束ない足取りでゴミを集めながら、どうしてこんな目に遭っているのかを思い出していた。