あれから一年が過ぎた。
「カーテンは絶対水色がいいだろ」
たくさんのインテリアが並ぶ家具店で、俺は隣を歩く誠矢を見上げた。
今日は春からの新生活のために買い出しに来ている。
俺たちは大学入学を期に二人暮らしをすることになった。進学先は別々だけど、これからは誠矢と毎日一緒にいられる。
「ラグはベージュだよ。合わせた方がいいんじゃないかな」
「じゃあラグを変えよう」
「うーん、でもそれだとソファと合わなくなるよ」
この一年間、俺の好みにばかり合わせるなと言い続けた結果、誠矢はそこそこ自己主張できるようになってきた。たまには意見がぶつかる時もあるけれど、本音で話せる心地良い関係性だ。
「分かった、カーテンは潤太が選んで。そのかわりベッドは俺が選んでいい?」
「うん、いいけど」
ベッドに違いなんてあるのか? 疑問に思いながらも寝具売り場に行くと、誠矢はとあるベッドを指差した。
「これにしよう」
すらりとした指が示していたのは、セミダブルベッドだった。
「ちょ……これはさすがにまずいだろ。たまには親が来るかもしれないんだぞ」
「今更隠さなくても大丈夫だよ」
「恥ずかしいんだよ!」
俺たちが付き合っていることは、お互いの両親も公認だ。二人暮らしをしたいと相談する時に誠矢が「潤太を幸せにします」なんて言うものだから、全部話さざるを得なかったのだ。
しかしだからといって親にダブルベッドを見られるのは羞恥に耐えられそうにない。
「とにかくこれは却下」
「えー……カーテン譲ったのに……」
「じゃあカーテンはお前が選んでいいから!」
そうは言ったが誠矢はまだ少し不満げだ。俺は人知れずため息をつき、背中を向けて呟いた。
「ダブルベッドは、もっと大人になってからな」
「……! うん、分かった」
ぶんぶんと大きく頷く頭の動きに合わせて、色素の薄い髪が揺れる。誠矢が髪を黒くしたのはあの時だけだ。どんな髪色でも、誠矢が自分らしくいられるのがいいと思う。
「誠矢、このあと昼飯どうする?」
「何でもいいよ。潤太は食べたいものある?」
誠矢は愛おしそうな目で俺を見ている。こんなに駄々漏れの好きオーラに何年も気づいていなかったなんて、去年までの俺はよっぽど鈍感だったみたいだ。
「じゃあ、俺は……二人の好きなものが食べたい」
「ふふ、じゃあ歩きながら決めようか」
きっとこの先も喧嘩したり、ムカついたりすることもあるだろう。でも誠矢となら、きちんと話し合って歩み寄れると思う。
だって、俺の定位置は、誠矢の隣なんだから。
「カーテンは絶対水色がいいだろ」
たくさんのインテリアが並ぶ家具店で、俺は隣を歩く誠矢を見上げた。
今日は春からの新生活のために買い出しに来ている。
俺たちは大学入学を期に二人暮らしをすることになった。進学先は別々だけど、これからは誠矢と毎日一緒にいられる。
「ラグはベージュだよ。合わせた方がいいんじゃないかな」
「じゃあラグを変えよう」
「うーん、でもそれだとソファと合わなくなるよ」
この一年間、俺の好みにばかり合わせるなと言い続けた結果、誠矢はそこそこ自己主張できるようになってきた。たまには意見がぶつかる時もあるけれど、本音で話せる心地良い関係性だ。
「分かった、カーテンは潤太が選んで。そのかわりベッドは俺が選んでいい?」
「うん、いいけど」
ベッドに違いなんてあるのか? 疑問に思いながらも寝具売り場に行くと、誠矢はとあるベッドを指差した。
「これにしよう」
すらりとした指が示していたのは、セミダブルベッドだった。
「ちょ……これはさすがにまずいだろ。たまには親が来るかもしれないんだぞ」
「今更隠さなくても大丈夫だよ」
「恥ずかしいんだよ!」
俺たちが付き合っていることは、お互いの両親も公認だ。二人暮らしをしたいと相談する時に誠矢が「潤太を幸せにします」なんて言うものだから、全部話さざるを得なかったのだ。
しかしだからといって親にダブルベッドを見られるのは羞恥に耐えられそうにない。
「とにかくこれは却下」
「えー……カーテン譲ったのに……」
「じゃあカーテンはお前が選んでいいから!」
そうは言ったが誠矢はまだ少し不満げだ。俺は人知れずため息をつき、背中を向けて呟いた。
「ダブルベッドは、もっと大人になってからな」
「……! うん、分かった」
ぶんぶんと大きく頷く頭の動きに合わせて、色素の薄い髪が揺れる。誠矢が髪を黒くしたのはあの時だけだ。どんな髪色でも、誠矢が自分らしくいられるのがいいと思う。
「誠矢、このあと昼飯どうする?」
「何でもいいよ。潤太は食べたいものある?」
誠矢は愛おしそうな目で俺を見ている。こんなに駄々漏れの好きオーラに何年も気づいていなかったなんて、去年までの俺はよっぽど鈍感だったみたいだ。
「じゃあ、俺は……二人の好きなものが食べたい」
「ふふ、じゃあ歩きながら決めようか」
きっとこの先も喧嘩したり、ムカついたりすることもあるだろう。でも誠矢となら、きちんと話し合って歩み寄れると思う。
だって、俺の定位置は、誠矢の隣なんだから。



