護衛騎士と王妃と奇跡の花

「あの花畑は……まさかっ!?」

 俺は、この先に見える光景に思わず声を上げた。国を出て随分経ってしまったが、ようやく見付けた。

 それは、奇跡の花が咲いているという場所。ついに、ついに辿り着いたのだ。

 奇跡の花、それはどんな願いも叶うというものだった。

 俺の願いは、王妃様を助けたい。ただただそれだけだ。王妃様は厄災から国を守る為、全ての力を使い果たし、深い眠りについてしまった。

 俺は護衛騎士だったのに、何もすることができなかった。否、王妃様は何もさせてはくれなかった。

 俺の手を振り切り、厄災に向かっていった王妃様。今度はこの命に変えても必ず救ってみせる!

 赤い花を摘み取ろうと、咲いている場所へ入ろうとした瞬間! 結界の様なものに弾かれてしまった。

 目の前にあるのに辿り着けない。触ることさえできない。

「どうして……!?」

 俺はその場に崩れ落ちてしまった。

 暫くその場から動けないでいると、空を飛んでいた偵察機の様なものから一人の男性? が降りてきた。

「青年、この場所に何の用だ?」

「この赤い花が必要なんです!」

 すると男性は険しい顔になり、いきなり怒鳴ってきた。

「これが、どのようなものか分かっているのか!」

 けれど、俺にはどうしても必要だ。

「何でも願いが叶う花と聞いています。俺は、王妃様を助けたいのです!」

 すると、男性は真剣な表情で俺に語る。

「私はこの花畑の管理人。どうしてもというなら、君の命と引き換えにだ。この花は持っていく事はできないのだよ。命の花だ。覚悟があるのなら、私が君の命と引き換えに願いを叶えに行ってやろう」

「俺の……命と……」

「そうだ! だから、諦め……」

 俺に迷いはなかった。

「構いません! 王妃様を救っていただけるのなら!」


 *


 数日後――

「私……」

 私は国の為に全てをかけ、厄災に向かって行ったはず。……助かったの?

 良く見ると、見知らぬ男性が目の前に立っていた。

「君を助けて欲しいと言われてね。この花が護衛騎士だった彼だ。また、私の花畑に一輪の花が増える。願いと引き換えに、美しく咲く花が」

 え……?

 私は花を見て言葉を失う。

「護衛騎士の彼って、あの……赤髪の彼、ですか? まさか、あなたはあの禁忌の花畑の管理人様?」

「いかにも、私は管理人。死神と言う人もいるな。『命と引き換えにしてでも君を助けたい』そう言っていたのは、まさしく彼だよ。君が助かると分かると、安堵の表情をし、最後まで微笑んでおった。君は彼に感謝するんだな」

 そう言うと、男性は花を持って行ってしまった。

「私を助ける為……に? そんな……」

 深い眠りについてしまう時、後悔は無かった。あなたの生きるこの世界が平和であれば、と……まさか、禁忌の花に手を出すなんて。

 厄災が去って、蒼く澄んだ空。

 けれど、あなたがいないこの世界はなんて寂しいのだろう……


 *



 奇跡の花……何でも願いが叶うといわれている花……それは、願いを叶える為大きな大きな代償を払わなければならない禁忌の花……決して手を出してはいけない。

 それが例え、愛する人の為であろうとも……