授業が終わると、僕は一刻も早くそのビルを抜け出す。
足が向かうのは、かつての中学校の近くにあるあの公園。あるいは、あのアパートの跡地だ。
夕暮れの光の中で、下校途中の生徒たちの姿が見える。
あの早瀬や、咲、そして僕の隣にいたあの星川。
彼らは新しい、紺色の高校制服を着て、友達と笑い合いながら歩いている。彼らにとって、僕はもう「いなかったこと」にされているのだ。
雪の夜に死んだ少年の噂は、春の風と共に風化し、彼らは何事もなかったかのように、用意された「正解」のレールを走っている。
僕は、彼らとすれ違う時に、わざと肩をぶつけそうになる。
けれど、彼らは僕に気づかない。あるいは、得体の知れない「不気味な何か」を避けるように、無意識に視線を逸らしていく。
僕は、公園のベンチに座り、指輪のない自分の薬指を見つめる。
先生。
初恋の相手を、僕は自分の手で奈落へ突き落とした。
その対価として得たのは、この「平和」という名の、あまりにも退屈で、あまりにも残酷な空白だった。
夜が来れば、僕はまたあの冷え切った部屋に帰り、母の啜り泣く声を聞きながら、解かれることのない数式を壁に描き殴る。
「……ああ、つまんねえ」
呟いた声は、誰にも届かずに夜の空気に吸い込まれていく。
高校生になった僕。
大人たちが言う「やり直し」なんて、僕には必要ない。
僕はただ、あの檻の中で、先生の視線に晒されていたあの瞬間だけが、僕の人生で唯一「生きていた」時間だったと、確信している。
けれど、その壊れた破片だけが、今の僕の唯一の宝物だった。
足が向かうのは、かつての中学校の近くにあるあの公園。あるいは、あのアパートの跡地だ。
夕暮れの光の中で、下校途中の生徒たちの姿が見える。
あの早瀬や、咲、そして僕の隣にいたあの星川。
彼らは新しい、紺色の高校制服を着て、友達と笑い合いながら歩いている。彼らにとって、僕はもう「いなかったこと」にされているのだ。
雪の夜に死んだ少年の噂は、春の風と共に風化し、彼らは何事もなかったかのように、用意された「正解」のレールを走っている。
僕は、彼らとすれ違う時に、わざと肩をぶつけそうになる。
けれど、彼らは僕に気づかない。あるいは、得体の知れない「不気味な何か」を避けるように、無意識に視線を逸らしていく。
僕は、公園のベンチに座り、指輪のない自分の薬指を見つめる。
先生。
初恋の相手を、僕は自分の手で奈落へ突き落とした。
その対価として得たのは、この「平和」という名の、あまりにも退屈で、あまりにも残酷な空白だった。
夜が来れば、僕はまたあの冷え切った部屋に帰り、母の啜り泣く声を聞きながら、解かれることのない数式を壁に描き殴る。
「……ああ、つまんねえ」
呟いた声は、誰にも届かずに夜の空気に吸い込まれていく。
高校生になった僕。
大人たちが言う「やり直し」なんて、僕には必要ない。
僕はただ、あの檻の中で、先生の視線に晒されていたあの瞬間だけが、僕の人生で唯一「生きていた」時間だったと、確信している。
けれど、その壊れた破片だけが、今の僕の唯一の宝物だった。
