精神崩壊

 銀色の筐体を通じて伝わってくる振動は、まるで先生の断末魔のようだった。一秒ごとに増えていく数字は、先生を縛り上げる鎖の数だ。先生がボクに教えた「最短距離」の正解。それは、ボクを壊そうとした先生自身を、社会の藻屑として消し去ることだったんだ。
 銀色のスマホが、一瞬だけ強く発光した。
 それはボクの人生が灰になる音であり、先生という絶対的な解が、修復不可能なエラーへと変わった合図だった。
 
 しばらくの間、画面を見つめたまま動けなかった。
 見知らぬ誰かが、ボクの絶望を消費し始めた。先生の人生が、ボクの手によって、デジタルの海へと引きずり出されていく。
 
「……あはっ、あはははは!」
 暗い部屋で、ボクは一人で笑い転げた。
 笑いすぎて、お腹が痛い。涙が少しだけ滲んだけれど、それは悲しみではなく、圧倒的な「解放」の味だった。
 明日、先生が駅で待っていても、もうボクを捕まえることはできない。
 先生の築き上げた完璧な世界は、今この瞬間から、ボクが放った「毒」によって溶け始めていくのだから。