先生はボクを見下ろしたまま、冷え切った笑みを浮かべて部屋のドアを開けた。そこには、聞き耳を立てていたのであろう母が、所在なさげに、けれど期待に満ちた顔で立っていた。
『お母様、維月とはしっかり話せました。……今の彼には、少し強めの「外部刺激」が必要なようです』
先生の声は、廊下に響くほど朗らかで、それでいて有無を言わせぬ響きを持っていた。母は、先生の放つ「頼りがいのある男」のオーラに心酔し、毒に当てられたように頬を上気させている。
「刺激……。はい、先生のおっしゃる通りですわ。この子ったら、私の言うことなんてこれっぽっちも聞かなくて」
『明日からは、私が責任を持って指導します。放課後だけでなく、休日も、そして登校できない日もです。……学外に私の知人が管理している静かな学習スペースがあります。明日からはそちらへ連れ出し、徹底的に基礎を組み直しましょう』
それは、ボクの同意を一切無視した、実質的な連行の宣告だった。
「別の場所」という言葉に、ボクの背筋は凍りついた。学校の準備室という檻から、さらに誰の目も届かない、先生の完全な私有地へと移送される。
「まあ! そんなことまでしてくださるなんて。維月、よかったわね、こんなに熱心な先生に恵まれて」
母は先生の腕に触れんばかりに身を乗り出し、感謝の言葉を連ねる。先生は母の視線を滑らかにかわしながらも、ボクに向かって眼鏡を光らせた。
『では、明日。……準備しておくように』
その言葉は、救いなどではなかった。獲物を袋小路へ追い詰めた猟師の、最後の一刺しのような響きだった。
『お母様、維月とはしっかり話せました。……今の彼には、少し強めの「外部刺激」が必要なようです』
先生の声は、廊下に響くほど朗らかで、それでいて有無を言わせぬ響きを持っていた。母は、先生の放つ「頼りがいのある男」のオーラに心酔し、毒に当てられたように頬を上気させている。
「刺激……。はい、先生のおっしゃる通りですわ。この子ったら、私の言うことなんてこれっぽっちも聞かなくて」
『明日からは、私が責任を持って指導します。放課後だけでなく、休日も、そして登校できない日もです。……学外に私の知人が管理している静かな学習スペースがあります。明日からはそちらへ連れ出し、徹底的に基礎を組み直しましょう』
それは、ボクの同意を一切無視した、実質的な連行の宣告だった。
「別の場所」という言葉に、ボクの背筋は凍りついた。学校の準備室という檻から、さらに誰の目も届かない、先生の完全な私有地へと移送される。
「まあ! そんなことまでしてくださるなんて。維月、よかったわね、こんなに熱心な先生に恵まれて」
母は先生の腕に触れんばかりに身を乗り出し、感謝の言葉を連ねる。先生は母の視線を滑らかにかわしながらも、ボクに向かって眼鏡を光らせた。
『では、明日。……準備しておくように』
その言葉は、救いなどではなかった。獲物を袋小路へ追い詰めた猟師の、最後の一刺しのような響きだった。
