精神崩壊

 ある昼休みの教室だった。ボクがカバンの奥で震える銀色のスマホを盗み見ようとした時、クラスメイトの男子数人がボクを囲んだ。
「なあ、辻田。お前が持ってるそのスマホ、親に隠れて持ってるんだろ?」
「……な、なんのこと?」
 ボクはとぼけたことを言って男子たちを欺こうとした。
「最近ずっと挙動不審だしさ。誰と連絡してんだよ。女? それともヤバい連中?」
 ニヤニヤとした下卑た笑い。ボクは咄嗟にスマホを隠したが、その動作がかえって疑念を深めたようだった。
 ボクは知らなかった。先生から与えられた「秘密」のせいで、ボクは周囲から浮き、得体の知れない存在としてクラスの調和から弾き出されていくことに。
 ボクを救うための「パイプ」だったはずのスマホが、今やボクをこの教室から切り離し、先生という名の檻に閉じ込めるための鉄格子になっていく。