『……維月』
声のトーンが、いつの間にか元に戻っていた。
先生の視線は、教室のドアからぼくの足先へ、そして潤んだぼくの瞳へと順に移動した。
「……ん?」
声にならなかった。
不意に、先生の顔がぼくの耳元に近づく。
熱い吐息とともに、密やかな囁きがぼくの鼓膜を震わせた。
『……あんなに派手に暴れては、先生も庇いきれない。維月が「いい子」であることを、目に見える形で証明してくれないか。……例の、ボールペンの件だ』
上がりそうになる口角を、必死に誤魔化す。
体中の血が沸騰するような高揚感。
ぼくは、塗りつぶされた掌をぎゅっと握りしめた。
汗で少し滲んだ「ボールペン」の文字が、皮膚に深く沈み込んで、そのまま心臓まで届きそうな気がした。
「……うん。塗り替えたい」
先生は、判別のつかない曖昧な笑みを浮かべて頷いた。
それは教え子を慈しむ聖者のようでもあり、獲物が罠にかかったのを確認する猟師のようでもあった。
『……そうだ。じゃあ早く着替えて、体育館に顔を出しに行きなさい』
声のトーンが、いつの間にか元に戻っていた。
先生の視線は、教室のドアからぼくの足先へ、そして潤んだぼくの瞳へと順に移動した。
「……ん?」
声にならなかった。
不意に、先生の顔がぼくの耳元に近づく。
熱い吐息とともに、密やかな囁きがぼくの鼓膜を震わせた。
『……あんなに派手に暴れては、先生も庇いきれない。維月が「いい子」であることを、目に見える形で証明してくれないか。……例の、ボールペンの件だ』
上がりそうになる口角を、必死に誤魔化す。
体中の血が沸騰するような高揚感。
ぼくは、塗りつぶされた掌をぎゅっと握りしめた。
汗で少し滲んだ「ボールペン」の文字が、皮膚に深く沈み込んで、そのまま心臓まで届きそうな気がした。
「……うん。塗り替えたい」
先生は、判別のつかない曖昧な笑みを浮かべて頷いた。
それは教え子を慈しむ聖者のようでもあり、獲物が罠にかかったのを確認する猟師のようでもあった。
『……そうだ。じゃあ早く着替えて、体育館に顔を出しに行きなさい』
