――夏休みまで、あと一ヶ月。
朝から夕方まで、暴力的なまでの日差しが街を焼き尽くす。
放課後の教室では、女子たちが必死に日焼け止めを塗り込んでいた。
そんな喧騒をよそに、ぼくは準備室へと向かう。そこへ通うことは、すでにぼくの日常になっていた。
(一番綺麗なものを、自分のものにする……)
あの日、二人きりの準備室で先生が言った言葉。
ぼくはそれを、一文字も違えずに脳内で何度も反芻する。
準備室のドアを引く。耳をつんざくような不快な金属音が響いた。
『……やっと来たか。少し遅かったな』
「ごめんなさい。少し、遅れました」
『いいんだ。ここに座って』
先生がドアを乱暴に閉める。
照明の点かない薄暗い部屋に、重い閉扉音が響き渡った。
先生は足早に椅子へ近づくと、白く冷たい手で座面を叩き、ぼくを促す。
『……どうだ。考えてきたか?』
「んー、まだ思いつかなくて。先生。先生にとっての『一番綺麗なもの』って、なあに?」
『どうして先生に聞くんだ。先生のことなんてどうでもいい。維月にとっての一番綺麗なものを選びな』
突き放すような言葉。けれど、その瞳だけはぼくを値踏みするようにじっと見据えている。
どうでもいいはずがない。
清水先生がぼくを汚してくれるから、ぼくはぼくでいられるのに。
先生の冷たい指が、ぼくの人生という白紙を黒く塗りつぶしてくれるのを、ぼくはこんなにも待ち焦がれているのに。
真っ白なままの退屈な未来なんていらない。この人の手で、ぐちゃぐちゃに汚されたいんだ。
「だって、先生に頼られたいんだもん」
朝から夕方まで、暴力的なまでの日差しが街を焼き尽くす。
放課後の教室では、女子たちが必死に日焼け止めを塗り込んでいた。
そんな喧騒をよそに、ぼくは準備室へと向かう。そこへ通うことは、すでにぼくの日常になっていた。
(一番綺麗なものを、自分のものにする……)
あの日、二人きりの準備室で先生が言った言葉。
ぼくはそれを、一文字も違えずに脳内で何度も反芻する。
準備室のドアを引く。耳をつんざくような不快な金属音が響いた。
『……やっと来たか。少し遅かったな』
「ごめんなさい。少し、遅れました」
『いいんだ。ここに座って』
先生がドアを乱暴に閉める。
照明の点かない薄暗い部屋に、重い閉扉音が響き渡った。
先生は足早に椅子へ近づくと、白く冷たい手で座面を叩き、ぼくを促す。
『……どうだ。考えてきたか?』
「んー、まだ思いつかなくて。先生。先生にとっての『一番綺麗なもの』って、なあに?」
『どうして先生に聞くんだ。先生のことなんてどうでもいい。維月にとっての一番綺麗なものを選びな』
突き放すような言葉。けれど、その瞳だけはぼくを値踏みするようにじっと見据えている。
どうでもいいはずがない。
清水先生がぼくを汚してくれるから、ぼくはぼくでいられるのに。
先生の冷たい指が、ぼくの人生という白紙を黒く塗りつぶしてくれるのを、ぼくはこんなにも待ち焦がれているのに。
真っ白なままの退屈な未来なんていらない。この人の手で、ぐちゃぐちゃに汚されたいんだ。
「だって、先生に頼られたいんだもん」
