穢れの軍神と縁の花嫁

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 正門へ近づくにつれ、空気が重くなった。
 黒い瘴気が、屋敷の屋根より高く噴き上がっている。

「朔哉さん……」

 みづきの足が速くなる。静馬が腕を掴んだ。

「待ってください」
「あれは、何ですか」

 静馬の顔から血の気が引いていた。

「禁術です。少佐の中に蓄積した瘴気を、無理やり暴走させています」

 その言葉を聞いた瞬間、みづきは静馬の手を振りほどいた。
植え込みの向こうに、正門が見える。兵士たちに囲まれた中心で、地面へ膝をつく朔哉。左腕からは黒い瘴気が激しく噴き出している。
 みづきが静馬の結界から飛び出した瞬間、兵士たちが振り返る。

「あの娘だ!」
「捕らえろ!」

 複数の兵士が動いても、みづきはただ朔哉だけを見つめて走った。
 黒い鱗は肩近くまで広がり、左手の爪は獣のように長く伸びていた。顔を上げた朔哉の瞳が、赤く染まっている。

「み……づき……?」

 かすれた声だった。みづきの足が止まらない。

「逃げろ……っ、来るな……!」

 怒鳴り声とともに、瘴気が吹き荒れる。強い風に煽られ、みづきの身体がよろめいた。それでも、踏みとどまる。黒い瘴気が肌へまとわりつく。息が苦しい。全身が重い。

 それでも、足を止めなかった。

「朔哉さん……っ!」

 みづきはまっすぐ前を見た。赤く染まった瞳が、こちらを捉えている。
 そこにいつもの穏やかな光はほとんどない。それでも、確かに――ここに朔哉がいる。