穢れの軍神と縁の花嫁

 リツの部屋は、書斎の二つ隣にあった。そこでは案の定、布団の上で飛び跳ねているリツの姿があった。

 「朔哉!みづきも!みてみてー!」

 その周りには祭りで手に入れた戦利品――風車に狐のお面、木彫りのおもちゃやりんご飴がいっぱいに並べられている。その真ん中で得意満面なリツ。

 「リツ、片付けないと寝られないよ。いつもよりだいぶ遅いんだから」
 「やだー!」

 リツはぷう、と頬を膨らませた。

 「今日は楽しかったなあ」
 「楽しかったですね」
 「また行きたい!」
 「静馬の術がなくても化けられるようになったらな」
 「ええー!」

 大げさに肩を落とす。その様子が可笑しくて、みづきは思わず吹き出した。

 「ねえー、もうすこしだけー」

 敷かれた布団の上で駄々をこねるリツ。こう見ていたら本当に五歳くらいの男の子みたいだ。しばらくごろんごろんと寝返りを打っていたリツが、突然顔を上げた。

 「じゃあさ、三人で寝よう!それならすぐに寝る!」
 「……え?」

 思わぬ提案に頭が真っ白になり、みづきは助けを求めるようにしてパッと朔哉を見上げる。その顔ははっきりとわかるくらい、耳から頬にかけてほんのりと赤く染まっていた。

 (朔哉さんまで、赤くなってる……!?)

 「いいよね、みづき!?」
 「え、あ、それは……っ、ちょっとその……」

 くりくりとした瞳で見つめられ、みづきは言葉に詰まってしまう。みづきが顔を真っ赤にしながらおろおろと視線を泳がせていると、朔哉が小さく咳払いをしてみづきとリツの間に入った。

 「こら、リツ。みづきをあまり困らせたら駄目だろう」
 「えー?みづきはいやなの?」

 不思議そうに首を傾げ、純粋きわまりない顔で覗き込んでくるリツ。

 「え、あ、えっと嫌というか……」

 嫌というよりも、恥ずかしすぎて心臓が破裂しそうなのだけれど。
 みづきがますます言葉に詰まっておろおろしていると、朔哉がリツの肩を優しく叩いて、一歩前に出た。

 「リツ、わがままを言ったら駄目だ。みづきは部屋に戻って先に休んで。俺がリツと一緒に寝るから」
 「やだーーっ!三人がいい!みづきと朔哉と三人で寝るのーーっ!」

 布団の上で足をばたつかせて猛抗議するリツ。
 わかる。楽しかった一日が終わってしまう寂しさと、あともう少しだけ、と願ってしまう気持ちはみづきにもよくわかった。

 なにより朔哉が「みづきが嫌がっている」と思っているのだとしたら、それは違うと伝えたかった。
 恥ずかしいけれど、嫌なわけでは、決してないのだから。

 「あ、あの……!私は大丈夫なので、三人で寝ませんか……?」

 しん、と一瞬だけ静かになった。
 おそるおそる顔を上げると、朔哉がみづきをじっと見つめていた。

 「……本当にいいのか?」

 低く、静かな声だった。驚きと、それ以上の何かが混じったような。

 「は、はい……っ」

 消え入りそうな返事だったけれど、朔哉はそれをちゃんと受け取ったようだった。しばらくみづきを見つめてから、ふっと表情を和らげる。

 「わかった。じゃあ今日だけそうしよう」
 「やったー!」

 リツが飛び上がるそばで、朔哉が「じゃあタキさんに布団を出してもらわないとね」と言った。
 そしてしばらくのあと、三つの布団がくっついた状態を見て、その光景に心臓を押さえたくなっていた。

 (私、とんでもないこと言っちゃったかも……!?)