そしてやってきた祭り当日。
夕暮れ時の帝都の大通りは、大勢の人で賑わっていた。通りの両脇には色とりどりの屋台が並び、頭上には明かりが灯されたたくさんの提灯が吊るされている。
焼き団子の甘い香りや、香ばしい焼き鳥の煙。遠くから聞こえてくる祭囃子。目に映るものすべてが新鮮で、みづきは思わず足を止めた。
「すごい……!」
故郷の村でも夏祭りはあった。けれど、当然ながら規模も人の多さも大違いで、ただ圧倒されてしまう。
「みづき、はやくはやくー!」
前を歩いていたリツが満面の笑みで振り返った。今日は特訓の甲斐もあって人間の男の子の姿を保っている。
「こら、走るなリツ」
「だって、せっかくのお祭りだよ!?」
「いいですか?強い感情の揺れがあると術式が不安定になります。訓練通り興奮しすぎないこと、いいですね?」
「はあーい!静馬せんせい!」
あれこれと目移りしながら歩いていると、金魚すくいの屋台が見えてくる。そこには、一足先に紗世が静馬の手を引っ張るようにして屋台を覗き込んでいた。
「この和紙の上に金魚を誘うんですよ、こうやってすーっと……」
「なかなかお上手ですね」
楽しそうな紗世と、真面目に金魚を見つめる静馬。いつになく楽しそうなふたり。せっかくならもう少し二人きりにしてあげたい。
そう思った時、隣にいた暁斗と目が合った。
「……五百森家は、居心地いいか?」
ふいに、暁斗に声をかけられる。
「は、はい。とても良くしていただいて」
「そうか」
暁斗はそれを聞くと目を逸らして、すぐに周囲の屋台を見回した。
「なあ坊主、リンゴ飴食うか?」
暁斗はリツの首根っこをひょいと掴む。
「はなせー!暁斗とはいかない!!」
「お、綿あめにイカ焼きなんかもあるぞ」
「わたあめ……!」
甘い匂いにあっさり釣られたリツを連れて、暁斗はそのまま人混みの中へと消えていく。朔哉もふたりの後ろ姿を見ながら、やれやれと溜息をついた。
「リツはあっちへ行ったのか。まあ暁斗がいるなら安心かな。みづきどうかした?」
「あ、いえ……っ」
『五百森家は、居心地いいか?』
今のはなんだったのだろう。
暁斗の「そうか」という声が、なぜか少し頭に残った。
けれど、金魚すくいの屋台でまだ楽しそうにしている紗世たちの姿が目に入って、みづきはすぐに朔哉を見上げる。
「あの、朔哉さん、私たちはあっちへ行きせんか?」
隣にいた朔哉の袖をぐいっと引っ張って、人混みをかき分けるようにして歩き出す。
けれど、焦るあまり周囲がよく見えていなくて、気づけば射的の屋台へと飛び込んでしまっていた。
夕暮れ時の帝都の大通りは、大勢の人で賑わっていた。通りの両脇には色とりどりの屋台が並び、頭上には明かりが灯されたたくさんの提灯が吊るされている。
焼き団子の甘い香りや、香ばしい焼き鳥の煙。遠くから聞こえてくる祭囃子。目に映るものすべてが新鮮で、みづきは思わず足を止めた。
「すごい……!」
故郷の村でも夏祭りはあった。けれど、当然ながら規模も人の多さも大違いで、ただ圧倒されてしまう。
「みづき、はやくはやくー!」
前を歩いていたリツが満面の笑みで振り返った。今日は特訓の甲斐もあって人間の男の子の姿を保っている。
「こら、走るなリツ」
「だって、せっかくのお祭りだよ!?」
「いいですか?強い感情の揺れがあると術式が不安定になります。訓練通り興奮しすぎないこと、いいですね?」
「はあーい!静馬せんせい!」
あれこれと目移りしながら歩いていると、金魚すくいの屋台が見えてくる。そこには、一足先に紗世が静馬の手を引っ張るようにして屋台を覗き込んでいた。
「この和紙の上に金魚を誘うんですよ、こうやってすーっと……」
「なかなかお上手ですね」
楽しそうな紗世と、真面目に金魚を見つめる静馬。いつになく楽しそうなふたり。せっかくならもう少し二人きりにしてあげたい。
そう思った時、隣にいた暁斗と目が合った。
「……五百森家は、居心地いいか?」
ふいに、暁斗に声をかけられる。
「は、はい。とても良くしていただいて」
「そうか」
暁斗はそれを聞くと目を逸らして、すぐに周囲の屋台を見回した。
「なあ坊主、リンゴ飴食うか?」
暁斗はリツの首根っこをひょいと掴む。
「はなせー!暁斗とはいかない!!」
「お、綿あめにイカ焼きなんかもあるぞ」
「わたあめ……!」
甘い匂いにあっさり釣られたリツを連れて、暁斗はそのまま人混みの中へと消えていく。朔哉もふたりの後ろ姿を見ながら、やれやれと溜息をついた。
「リツはあっちへ行ったのか。まあ暁斗がいるなら安心かな。みづきどうかした?」
「あ、いえ……っ」
『五百森家は、居心地いいか?』
今のはなんだったのだろう。
暁斗の「そうか」という声が、なぜか少し頭に残った。
けれど、金魚すくいの屋台でまだ楽しそうにしている紗世たちの姿が目に入って、みづきはすぐに朔哉を見上げる。
「あの、朔哉さん、私たちはあっちへ行きせんか?」
隣にいた朔哉の袖をぐいっと引っ張って、人混みをかき分けるようにして歩き出す。
けれど、焦るあまり周囲がよく見えていなくて、気づけば射的の屋台へと飛び込んでしまっていた。

