穢れの軍神と縁の花嫁

 夕方。屋敷の外れにある蔵の近くには、小さな小屋が完成していた。
 庭園の隅、木陰に寄り添うように建てられたそれは、仙狸が雨風をしのぐには十分な大きさだ。少し離れた場所では、リツが朔哉の足の後ろに半分隠れながら、小屋をじっと見つめていた。

 「ねこの家だ!」

 興味津々な声に、蔵の陰から仙狸が姿を現す。

 「にゃあ」

 新しい小屋の周りを一周し、匂いを確かめるように鼻を動かす。やがて仙狸は小屋の入口を覗き込み、それから中へ入った。

 「気に入ったみたいですね」
 「ああ」

 朔哉が小さく笑うと、近くの木の枝から羽音が響いた。
 みづきが頭上を見上げると、黒い翼を広げた大きな鳥が仙狸を見下ろしている。羅刹だ。

 「ここより先は近づくなよ」

 翼の先で屋敷の方を指し示した。

 「にゃあ」

 仙狸の返事を聞くと、羅刹はばさりと翼を広げて飛び立っていった。

 「大丈夫でしょうか?」
 「ここに小屋を建てることを提案したのは羅刹だからね。少なくとも、追い出す気はないみたいだ」

 その時、仙狸がみづきの膝へ前足を掛けると、ふわりと飛び乗った。

 「よかったね」

 膝の上で丸くなる仙狸の艶やかな毛並みを撫でると、気持ち良さそうに目を細める。そして、しなやかな体をぐっと伸ばすと、ぺろりと頬を舐められた。

 「わっ、」

 思わず声が漏れると、仙狸は満足そうに喉を鳴らした。