「あ、あの!今週末の非番の日、もしよろしければ一緒にお茶でもどうですか!?」
紗世が頬を赤くしながらも、静馬を真っ直ぐ見つめる。その横顔は真剣そのものだった。
勇気を振り絞ったような誘い。隣で見ているだけなのに、なぜかみづきまで緊張してしまう――けれど。
「お誘いはありがたいのですが」
静馬は眼鏡のブリッジを押し上げる。
「今週末は、軍部で報告書の作成が溜まっているので休日出勤の予定です」
「それなら来週末はどうですか? 大通りに新しく――」
「その日は帝都西区の結界調査の任務が入っています」
「じゃあその次の日曜日は――」
「申し訳ありませんが管理局との合同会議が――」
「もういいですーーーーっ!!」
ついに紗世が爆発した。隣で暁斗が「うおっ!?」と一歩後ずさる。
「もうなんなんですか!口を開けば任務任務、仕事仕事って!!」
紗世は肩を震わせてから、キッと顔を上げる。
「私、これくらいで諦めませんから!」
「はい?」
「いつか絶対に振り向かせてみせますからね!」
びしっと指を突きつけられた静馬は、数秒ほど考え込んだ。
そして、不思議そうに首を傾げた。
「さっきからずっと、私はあなたの方を向いて話していますが」
(ああっ、静馬さん!そっちの『向く』じゃありません……!)
みづきも心の中で全力で突っ込む。
静馬はふざけているわけじゃない、至って真面目に答えている。だからこそ、噛み合わない。
「もういいです!この鈍感眼鏡っ!!」
「どんかんめがね……?暁斗、今のは視力矯正器具に対する新しい蔑称でしょうか?」
「はははははっ!どうするよ?悪いけどうちの堅物副官は手強いぜ?」
暁斗がおかしそうに笑う。
「~~~っ、それでも諦めませんから!みづきちゃん、行こう!!」
「あっ、すみません、失礼します!!」
言うだけ言うと、くるりと背を向けて足早に戻ってくる。
その後ろ姿を見送りながら、静馬は本気で不思議そうな顔をしていた。
「もうなんなのよあの堅物は……!」
ぶつぶつと文句を言い続けている。
みづきは思わず笑ってしまった。
「紗世さん」
「なあに?」
「私、応援していますから。おふたりのこと」
一瞬きょとんとした紗世だったが、すぐに目を潤ませる。
「ありがとう……! 私、負けないから!」
「はい!」
帰り道、夕暮れに染まり始めた帝都の街を歩きながら、みづきはふと空を見上げる。
今頃朔哉はなにをしているだろう。
今日もお屋敷に帰ってきて、一緒に夕食を囲めるだろうか。
(その時に今日のことを話したら、どんな顔をするかな?)
そんなことを思い浮かべている自分に気づいて、少しだけ不思議な気持ちになった。
提灯が風に揺れる通りを抜けながら、みづきは紗世とともに馬車に乗り込み、一足先に五百森家への帰路につくのだった。
紗世が頬を赤くしながらも、静馬を真っ直ぐ見つめる。その横顔は真剣そのものだった。
勇気を振り絞ったような誘い。隣で見ているだけなのに、なぜかみづきまで緊張してしまう――けれど。
「お誘いはありがたいのですが」
静馬は眼鏡のブリッジを押し上げる。
「今週末は、軍部で報告書の作成が溜まっているので休日出勤の予定です」
「それなら来週末はどうですか? 大通りに新しく――」
「その日は帝都西区の結界調査の任務が入っています」
「じゃあその次の日曜日は――」
「申し訳ありませんが管理局との合同会議が――」
「もういいですーーーーっ!!」
ついに紗世が爆発した。隣で暁斗が「うおっ!?」と一歩後ずさる。
「もうなんなんですか!口を開けば任務任務、仕事仕事って!!」
紗世は肩を震わせてから、キッと顔を上げる。
「私、これくらいで諦めませんから!」
「はい?」
「いつか絶対に振り向かせてみせますからね!」
びしっと指を突きつけられた静馬は、数秒ほど考え込んだ。
そして、不思議そうに首を傾げた。
「さっきからずっと、私はあなたの方を向いて話していますが」
(ああっ、静馬さん!そっちの『向く』じゃありません……!)
みづきも心の中で全力で突っ込む。
静馬はふざけているわけじゃない、至って真面目に答えている。だからこそ、噛み合わない。
「もういいです!この鈍感眼鏡っ!!」
「どんかんめがね……?暁斗、今のは視力矯正器具に対する新しい蔑称でしょうか?」
「はははははっ!どうするよ?悪いけどうちの堅物副官は手強いぜ?」
暁斗がおかしそうに笑う。
「~~~っ、それでも諦めませんから!みづきちゃん、行こう!!」
「あっ、すみません、失礼します!!」
言うだけ言うと、くるりと背を向けて足早に戻ってくる。
その後ろ姿を見送りながら、静馬は本気で不思議そうな顔をしていた。
「もうなんなのよあの堅物は……!」
ぶつぶつと文句を言い続けている。
みづきは思わず笑ってしまった。
「紗世さん」
「なあに?」
「私、応援していますから。おふたりのこと」
一瞬きょとんとした紗世だったが、すぐに目を潤ませる。
「ありがとう……! 私、負けないから!」
「はい!」
帰り道、夕暮れに染まり始めた帝都の街を歩きながら、みづきはふと空を見上げる。
今頃朔哉はなにをしているだろう。
今日もお屋敷に帰ってきて、一緒に夕食を囲めるだろうか。
(その時に今日のことを話したら、どんな顔をするかな?)
そんなことを思い浮かべている自分に気づいて、少しだけ不思議な気持ちになった。
提灯が風に揺れる通りを抜けながら、みづきは紗世とともに馬車に乗り込み、一足先に五百森家への帰路につくのだった。

