穢れの軍神と縁の花嫁

 「っ!?」
 「あ、朔哉だ!」

 立っていたのは、藍色の羽織を着た朔哉だった。
 朔哉はみづきの手のひらの上にいる黒ひよこを見つめ、少し呆れたように眉根を寄せた。

 「どうしてそんな姿をしている、羅刹」
 「ふふん、いいじゃろ。もふもふは人間に人気があるからの。お主もこの娘を見習って、少しはわしを愛でたらどうじゃ」
 「猫を被るのもほどほどにな」
 「猫ではない、ひよこだ」

 大真面目に言い返す黒ひよこに、みづきが心の中でそっとツッコミを入れていると、朔哉はふっと視線を和らげてリツを見た。

 「リツが彼女を連れ出したのか? あまり振り回しちゃ駄目だぞ」
 「だって、ぼくみづきとおともだちになったんだもん!」

 やれやれと肩をすくめた朔哉は、ようやくみづきと視線を合わせた。

 「おはよう、みづき」
 「あ、五百森さん……! おはようございま――」

 挨拶をしようとして、みづきは自分の格好に気がついた。
 リツに手を引かれて勢いよく飛び出してきてしまったため、今の自分は完全に『着替え前の寝間着姿』のままなことを。

 (な、何をやってるの私……っ!!)

 「す、すみませんっ! こんな格好で私……っ!!」
 「気にしなくていい。それより、よく眠れた?」
 「は、はい……」
 「それならよかった」

 おずおずと顔を上げたみづきに、朔哉は柔らかく微笑む。

 「……っ」

 その優しい眼差しは反則だ、と思う。みづきは恥ずかしさと胸のドキドキで完全に固まってしまった。