穢れの軍神と縁の花嫁

 「みづきも抱っこしてみる?」
 「え、いいんですか?」
 「うん、おじちゃん、すっごくあったかくて気持ちいいよ!ほら!」
 「これ狐の子、手荒に扱うなといつも言っておろうが」

 みづきはおずおずと両手を差し出した。
 手のひらに、ぽす、と収まる真っ黒な塊。

 (なんか、かわいいかも……)

 自然豊かな山あいの村で育ったみづきは、幼い頃からなぜか動物たちによく懐かれた。こうして、裏山でひよこや小鳥を手のひらに乗せて遊んだこともある。
 まさか帝都に来て、あやかしを手のひらに乗せることになるとは思わなかったけれど。

 指先で優しく背中を撫でると、羅刹はすっと目を細めた。

 「ふむ……そうか。おぬし『(えにし)の娘』か」
 「え?」

 (えにしの、むすめ……?)

 聞き慣れない言葉に、みづきは目を瞬く。
 羅刹はそれ以上何も語らず、ただ「なるほど、なるほど」と納得したように何度も小さな頭を縦に振っている。

 「お主が狐の子や朔哉に好かれる理由がわかったわい」
 「そんなっ、私なんてまだお会いしたばかりで――」

 みづきが顔を真っ赤にして慌てて首を振ろうとした時。

 「こんなところに揃って、なにをしているんだ?」

 芝生の向こうから、聞き覚えのある低くて心地よい声が降ってきた。