「軍部へ戻られたんですよ」
「軍部に?」
「ええ。さっきはみづきさんを送り届けるために戻られただけで、今ごろはまだお仕事かと」
「若様ってばいつもそうなのよ!夜更けに帰ってきて、朝も早くに出て行くし。いったいいつ休んでいるのやら」
湯呑みにお茶を注ぎ足しながら、紗世がぷうっと唇をとがらせる。
「軍神様だなんだって、こき使われすぎなのよ!今度静馬さんが来たら私がガツンと言ってやるんだから!」
「およしなさいな。若様にもお立場というものがあるのですから」
「だってー」
言い合う二人を見つめながら、みづきは箸を止める。
(私、まだ五百森さんにきちんとお礼も言えてない……)
朔哉は「君については、すでに軍部にも情報が上がっていた」と言っていた。だとしたら、彼は流民の自分をただ親切心で助けたわけではなく、何かを調べるために連れてきたのかもしれない。
でも、もし調査が目的ならどうしてこのお屋敷に連れてきてくれたのだろうか。
みづきは、羽倉でのことを思い出していた。
軍神としてひとり、あやかしを斬っていく彼の姿。左腕を押さえて、ひどく苦しそうに歪んだ顔。
そして――その腕に触れた瞬間、不思議な光に包まれたこと。
(あの光はなんだったんだろう……)
どれだけ考えても、今の段階では何一つ答えは出そうになかった。
ただ、あの瞬間に朔哉が驚いたように目を見開いた顔と『君は化け物じゃない』と言ってくれた熱い眼差しだけが、目に焼き付いている。
「みづきさん? 手が止まっていますよ。おかわり、入れましょうか?」
タキの優しい声にハッと我に返り、みづきは慌ててお椀を持ち上げた。
「あ、は、はい……っ! すみません、お願いします……っ」
タキはみづきのお椀を受け取ると、目元を優しく和らげる。
「ふふ。若様には、きっと明日の朝には会えますよ」
「あ、はい……っ」
会いたいと思っている気持ちをすべて見透かされたようで、みづきは顔を赤くする。
タキと紗世は顔を見合わせ、くすりと微笑んだ。
「軍部に?」
「ええ。さっきはみづきさんを送り届けるために戻られただけで、今ごろはまだお仕事かと」
「若様ってばいつもそうなのよ!夜更けに帰ってきて、朝も早くに出て行くし。いったいいつ休んでいるのやら」
湯呑みにお茶を注ぎ足しながら、紗世がぷうっと唇をとがらせる。
「軍神様だなんだって、こき使われすぎなのよ!今度静馬さんが来たら私がガツンと言ってやるんだから!」
「およしなさいな。若様にもお立場というものがあるのですから」
「だってー」
言い合う二人を見つめながら、みづきは箸を止める。
(私、まだ五百森さんにきちんとお礼も言えてない……)
朔哉は「君については、すでに軍部にも情報が上がっていた」と言っていた。だとしたら、彼は流民の自分をただ親切心で助けたわけではなく、何かを調べるために連れてきたのかもしれない。
でも、もし調査が目的ならどうしてこのお屋敷に連れてきてくれたのだろうか。
みづきは、羽倉でのことを思い出していた。
軍神としてひとり、あやかしを斬っていく彼の姿。左腕を押さえて、ひどく苦しそうに歪んだ顔。
そして――その腕に触れた瞬間、不思議な光に包まれたこと。
(あの光はなんだったんだろう……)
どれだけ考えても、今の段階では何一つ答えは出そうになかった。
ただ、あの瞬間に朔哉が驚いたように目を見開いた顔と『君は化け物じゃない』と言ってくれた熱い眼差しだけが、目に焼き付いている。
「みづきさん? 手が止まっていますよ。おかわり、入れましょうか?」
タキの優しい声にハッと我に返り、みづきは慌ててお椀を持ち上げた。
「あ、は、はい……っ! すみません、お願いします……っ」
タキはみづきのお椀を受け取ると、目元を優しく和らげる。
「ふふ。若様には、きっと明日の朝には会えますよ」
「あ、はい……っ」
会いたいと思っている気持ちをすべて見透かされたようで、みづきは顔を赤くする。
タキと紗世は顔を見合わせ、くすりと微笑んだ。

