醜い羽の嫌われ者

「誰ですか?」
冷たく放った言葉に、驚きを隠せずにいるレオンハルト。
無論、誰かなんてわかってる。
幼い頃の面影もきちんと残っているのに、腹立たしいくらい顔が整っている。
いつもいつもレーンファをおだてて、褒め称えてくれたリシューだ。
「…え_、なにいってるの?僕、だよ、昔遊んだ__」
「誰だか知らないけど、話しかけないで」
レオンハルトの言葉を遮り、冷たく言い放つ。
レーンファは本当は親友にこんな事言いたくない。
だが、次期英雄であるレオンハルトが悪魔と仲が良かったなんて、知られてしまったらどう尾ひれが着くかわからない。
親友に冷たい言葉を吐く嫌悪感もありながら、少し、スッキリしてしまう自分に腹が立つ。
驚きで固まったレオンハルトに背を向け歩き出す。
彼は神だ。
「天使もどき」のようなレーンファとは住む世界が違う。
彼を見向きもせず、背を向け歩く。
「レーンファ!」
名前を呼ばれるが、振り返りはしない。
少し複雑な気持ちになりながらも自分のクラスにはいる。
クラスメイトはレーンファの羽の色を見て眉をしかめる。
そんな視線にも慣れてしまって静かに座る。
誰も話しかけようともしないし、近づこうとするものは1人もいない。
コソコソとレーンファのことを言う声は聞こえてくる。
(居づれぇ…)
そんなレーンファの心を汲み取っていないのだろうが、救うように鐘が鳴った。
「皆〜、席につけ」
鐘が鳴り終わるのと同時に教室に入ってきた教師らしき者は冴えない顔つきをしていた。
教師は…否教師とも言えるかわからない身なりが汚いそのものははぁ〜と、クソでかいため息をこぼし、日誌をぽん、と置き端的に述べた。
「お前らの担任をすることになったリフカだ…とは言っても俺、お前らの教師するつもりねぇからな、うん。まあ、頑張ってくれや」
(((は??)))
おそらく、その場にいたもの全員目を丸くしていただろう。
「センセ〜、それって職務放棄じゃないですか〜?」
緊張感のない声とともに立ち上がったのは、薄水色の羽を持った天使だった。
スカイブルーの瞳に縁取られた長い睫毛が瞬きするたびに他の者の視線を奪う。
要するにイケメンだ。
「俺だって、こんな仕事受けるつもり無かったんだ。なのにあの腹黒主任のせいでよ…今年も不眠か…」
イケメンをはぁ〜とさえない目でみるリフカ。
「ともかく、お前ら問題だけは起こすなよー。めんどくさいんだよなぁ」
(なんだろう…近いものを感じる)
レーンファは少し親近感が湧く。
そうしていると授業の終了を告げる鐘がなった。
ざわざわと出ていく生徒を遠目で見る。
すると、レーンファの前に誰かが立った。
一瞬、レオンハルトかと思い身構えたが、見慣れない水色髪にすぐに気づく。
「羽の色、初めて見る色だ〜!」
「はぁ」
それはそうであろう。
水色髪は先程リフカに意見をしていた生徒だ。
「僕、ミシェ〜。君の名前はぁ?」
「…レーンファ」
緊張感が一切なく、だがしっかりと芯のある声だ。
水色の羽は貴族階級。貴族はレーンファを嫌う人達が多い。
何が目的かは知らないが、話しかけられるのは悪い気はしない。
「レーンファって、レオンハルト様と知り合いなの?話しかけられてたよね?」
「いや、知らない。間違えたんじゃないか」
レーンファは机を立ち、扉へ向かう。
「どこ行くの〜?」
「帰る」
別に、話しかけられたからと言って、つるむ気はない。
逆に、貴族階級の水色羽が天使もどきと仲良くしているなんて、あちら側も体裁が悪いだろう。
(ちょっと…悲しい…なんてことがあるかクソ!貴族はクソだ!どうせアイツは影で俺のことを悪く言いやがるだろうがッ)
要するに、他人に話しかけられて嬉しくなったのを認めたくなかったのだ。