昨日編集したショート動画は、昨日のうちに公開した。再生数も悪くなく、コメント欄にもいくつか楽しみにしているというコメントが来ていた。
「あ、歌い手さんからもDM来てる。これは返信しておこ」
昼休み、萌は今日も屋上の片隅でスマホを見ながら昼ごはんを食べていた。
煌輝に見つかった場所だからもうここには来れないと思っていたが、今日は昼休みに入ってすぐに一軍たちが『今日空き教室使っていいって』と楽しそうに煌輝を連行していったので、今日は煌輝がここに来ることはないはずなのだ。『騙されないから』なんて叫んで挙動不審に煌輝を拒絶したのだからきっと愛想も尽きただろう。それに今日は今年一番の夏日という予報も出ていたから他の生徒も来ることはないだろう。
今はひとりきりなんだと思うと、凪いだ空気に少しほっとすると同時に、昨日とは違う静けさが少し重く感じた。
「……ていうか、やっぱり暑いな……」
日陰にいるとはいえ、コンクリートは直に触ると火傷をしそうなくらい熱くなっていて、今日は風もなく少し息苦しいほどで、普段汗をかかない萌でさえ、首筋を汗の雫が滑り落ちていく。
少し湿った指先でスマホの画面に触れていると、その画面にぽたりと雫が落ちた。上を向いて天気を確認するが相変わらず容赦ないほどの晴天で、雨の気配はない。だとすると自分か、と思い額に触れると少し濡れていた。自分でもひくほど汗をかいているらしい。
これは飲み物くらい買ってこないとまずいかもしれない、と思い萌はスマホを制服のポケットにしまい込み、立ち上がろうとした。
その瞬間、ぐにゃりとコンクリートが歪んで、萌は尻もちをついた。
「え……」
座っているはずなのに、この屋上が回転しているのでは思うほど揺れている。地震かとも思ったが建物が揺れている感じではなかった。どちらかと言えば上下が逆さまになって回っているような感じだ。あまりの気持ち悪さに、萌はそのまま横に倒れ込んだ。
「天羽……? え、天羽! どうした?」
近くでそんな声が聞こえる。きっと煌輝だなと思ったがその声はいつもの柔らかいものではなくて、低く硬い。その呼びかけに萌は上手く反応できなくて手を伸ばした。震える指先の向こうに眉を下げた煌輝の顔が見える。
「気持ち悪い? 保健室行こ、肩貸すから!」
萌が差し出した手を煌輝が取る。熱いその手に包まれた瞬間、どこかほっとして、萌は目を閉じた。


