憧れの教育実習生に、脈がない!?

始業のチャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。
「今日から二週間、うちのクラスに教育実習生が来ることになった。入ってくれ」
ガラガラと扉が開き、一人の男が入ってきた。 黒い厚手のコート。雪のように白い肌。つぶらな瞳。忘れもしないその姿に、コウは自分の目を疑った。
「はじめまして。教育実習生の黒島純太です。よろしくお願いします」
静かに一礼した彼に向け、教室の空気がパッと華やぐ。
「よろしくお願いしまーす!」
「先生、めっちゃかっこええやん!」
クラスメイトたちは皆、笑顔で歓迎の拍手を送った。パチパチという無邪気で明るい音が、教室中に響き渡る。
しかし。突如、ガタッ っと椅子が大きな音を立てて床に倒れ、教室の拍手がピタリと止んだ。
「……え?」
クラス中の視線が一斉にコウに集まる。
「コウ、どうしたん?」
「いや……純太先生、去年の冬も、実習生で来てただろ。俺たちが1年の時」
「コウ、お前何言うてんねん? 先生今日初めてやん」
「勉強しすぎて疲れとるんやろ。幻覚でも見えてんちゃう?」
クラスメイトたちがどっと笑う。担任も怪訝そうな顔をしている。 コウは混乱した。皆、何を言っているんだ。たった一年前のことなのに。
黒板の前に立つ純太が、ゆっくりとコウの方を見た。 純太は、初対面の生徒に向けるような完璧な愛想笑いを浮かべ、小首を傾げる。
「人違いでしょうか。……それとも、どこかで出会ったことがありましたっけ?」
その静かで吸い込まれるような声に、コウは反論の言葉を見失い、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
絶対に人違いなんかじゃない。去年の冬も、彼は確かにこの教室で同じように挨拶をしていたはずだ。なのになぜ、クラスメイトは誰も覚えていないのか。
置いてけぼりのコウを他所に、純太は淡々と続ける。
「それでは、早速授業を始めますね。」
純太が黒板に名前を書くため、チョークを手に取る。 袖口から覗くその手首は、まるで血が通っていないかのように、透き通るほど青白かった。