君の体温が欲しくて

恐ろしい因習に縛られていた村の最期は、拍子抜けするほど呆気ないものだった。

コウと純太が覚悟を決めて村へ戻った時、そこには既に校長による絶対的な支配はなく、ただ静かな混沌が広がっていた。

薬草による洗脳のせいで、「神様に捧げる生贄」の存在を心の拠り所にしていた村人たち。しかし、生贄の血を引き継いだはずのコウが村から逃げ出したにもかかわらず、村には激しい吹雪が吹き荒れることも、恐ろしい災いが降りかかることもなかったのだ。

「よそ者がいなくなれば村が滅ぶ」という教えが嘘だったという絶対的な事実を前に、村人たちは呆然とし、長年の信仰心の行き場を失って途方に暮れていた。洗脳の要であった「恐怖」が薄れた彼らの目を覚まさせ、味方につけるのは、そう難しいことではなかった。

二人は正気を取り戻し始めた村人たちと協力し、すべての元凶である校長を追い詰めた。そして、かつて純太が飲まされたのと同じように、校長自身にあの「赤紫蘇ジュース」を飲ませることに成功する。

それから程なくして、石のように冷え切っていたコウの体には、ドクドクと温かい血が巡り、本来の人間らしい柔らかな体温が戻っていった。身代わりとして引き継いでしまった呪縛が、完全に解かれた瞬間だった。

校長が行っていたのは、薬草を使った洗脳や軟禁だけではない。数々の横領や非人道的な支配など、彼には余罪が山のようにあった。東京でコウと純太が見つけ出した父親の手記やデータという確たる証拠が揃っていたため、警察が介入すると校長はすぐに逮捕され、村の異常な支配構造は音を立てて崩壊した。