フロントガラスではワイパーが重たそうに雪を跳ね除け、車内には古びたヒーターの唸る音が響いていた。
「まったく、ひどい雪やで。こないな日は家でおとなしゅうしとるのが一番や」
昨晩の酒が残っているのか、不機嫌そうにぼやく祖父の言葉を右から左へ聞き流しながら、コウはコートのポケットの中で、昨晩書いた手紙の感触をそっと確かめた。
隣に座る祖父との距離も、村人たちの過剰な善意もひどく息苦しいが、手紙に触れている間だけは、コウの胸の奥はどこか晴れやかだった。
『拝啓 黒島純太先生。
お久しぶりです。東京は雪、降ってますか?この村は相変わらず雪の日ばかりで、どこもかしこも凍りつくように真っ白です。』
結露した窓ガラスの向こうでは、鉛色の空から重たい雪が絶え間なく降り続いている。車が走り出しても、ルームミラーには、こちらを笑顔で見送り続ける村人たちの姿が小さく映っていた。
『この村は相変わらず雪の日ばかりで、どこもかしこも凍りつくように真っ白です。』
車が、高校の前に停まる。「ほな、帰りも迎えに来たるさかいな」という祖父の声を背に、コウは「うん」とだけ短く返してドアを開け、冷たい外気の中へ降り立った。 ギュッと雪を踏みしめ、校門をくぐる。
『先生、去年の冬に俺が言ったこと、まだ覚えていますか?』
