君の体温が欲しくて

純太がコウの腕を握ったまま立ち尽くしていると、コウはその冷え切った手で強引に純太の腕を引き、すぐ横にあった理科準備室の扉を開けた。
中へ滑り込むなり、ガチャンと内鍵を閉める。薬品の匂いが漂う薄暗い部屋の中で、コウは純太をドアに押し付けるようにして退路を塞いだ。

「コウ、君……本当に自分の体がどうなったか、わかっているんですか!? 君が呪いを……」
「しーっ。大声出したら、誰か来ちゃうよ」

パニックになりかける純太の唇を、コウは氷のように冷たい人差し指でそっと塞いだ。
そして、もう片方の手で純太の赤く染まった頬を包み込むように撫でる。ついさっきまで雪のように冷たく透き通っていたはずの純太の肌は、今は人間らしい柔らかな熱を帯びていた。

「……すげえ。本当に温かい。先生に体温が戻って、俺、すげー嬉しい」
「っ……そんなこと言っている場合じゃ……!」

純太の悲痛な声を遮るように、コウはふっと身を屈め、純太の左胸にそっと耳を押し当てた。
「心臓が鳴ってるの、聞こえる」

コウの静かな呟きに、純太は息を呑む。
ドクン、ドクンと、自分でも戸惑うほど早く激しく脈打つ鼓動が、コウに直接伝わっているのがわかった。純太の顔が、みるみるうちにさらに朱に染まっていく。

コウはゆっくりと顔を上げると、純太の潤んだ瞳を真っ直ぐに見つめ、そのままそっと唇を重ねた。

「……んっ!?」

触れ合ったコウの唇は、血の通っていない、凍てつくような感触だった。
純太はハッとして、咄嗟に顔を背け、コウの肩を押しのけようとした。

「んんっ……、だめ、コウ君……ここは学校で……っ」
「……」

照れと動揺、そして自分を身代わりにさせてしまった罪悪感から嫌がる素振りを見せる純太に対し、コウは少しだけ唇を離すと、どこかずるい笑顔を浮かべて囁いた。

「俺、先生の代わりに呪い引き受けてやったんだからさ。……これくらい、許してよ」
「……っ」

その一言に、純太の抵抗する手からスッと力が抜けた。
そんな狡い言い訳をされては、何も言い返せるはずがない。

ぐうの音も出なくなった純太の葛藤を見透かすように、コウはもう一度、今度は逃がさないように純太の後頭部に手を添え、より深くその冷たい唇を押し当ててきた。

「んっ……」

急激な体温の変化で熱を出したように火照りきっていた純太の唇に、コウの凍えるような唇が重なる。
それは純太が数年にわたって味わい続けてきた、あの恐ろしい冬の冷たさそのものだったはずなのに――今の熱に浮かされた純太にとっては、熱を奪っていくそのひんやりとした感触が、背徳的なまでに気持ちよかった。

自分が背負っていた呪いを、今は彼が代わりに引き受けてくれている。
純太はギュッと目を閉じ、震える手でコウの背中の制服を強く握りしめながら、与えられる心地よい冷感と、抗えない罪悪感の中にただ為す術もなく溺れていくことしかできなかった。