憧れの教育実習生に、脈がない!?

翌朝。天気予報通りの大雪だった。
玄関を出て、祖父がエンジンを温めている車へと向かおうとしたコウは、ふと足を止めた。
家の前に、近所の村人が乗った軽ワゴンが停まっていたのだ。コウの姿を認めるなり、中から数人の村人が満面の笑みでぞろぞろと降りてくる。
「おはよう、コウ君! いやあ、ひどい雪だねえ。学校までうちの車で送っていってあげようか?」
「あ、おはようございます。……ありがとうございます、でも今日はじいちゃんが送ってくれるんで、大丈夫です」
コウが愛想笑いを浮かべて断ると、村人たちは「ああ、そうかい」と口々に言いながら、なぜかニコニコと顔を見合わせた。
「それならせめて、ご飯だけでもしっかり食べなさいな! ほら、昨日の晩御飯の煮物の残りだけど、よく味が染みて美味しいから」
「あと、うちで採れた山芋と大根も持っていき! 東京の子は細くていかんわぁ」
断る隙など一切与えられず、ずっしりと重いタッパーや、土のついた野菜の入ったレジ袋が、次々とコウの腕に押し付けられる。
「えっ、ちょ、こんなに貰っても……」
「遠慮せんでええの! コウ君はね、うちの村のたいせつな、たいせつな宝物なんやから!」
言うなり、村人のおばさんの一人が、コウの首筋から肩にかけてをベタッと撫で回した。コウは慌てて距離をとり、苦笑いを浮かべる。
「ふふふ、ええ子やねぇ。しっかり栄養つけるんよ……」
コウの背筋にゾクッと悪寒が走った。
悪意は全くないのだろう。ただ、パーソナルスペースを平気で踏み荒らされる感覚に、ひどい疲労と薄気味悪さを覚えていた。
逃げるように「ありがとうございます」とだけ頭を下げて、祖父の車の助手席へと転がり込む。

バタン、とドアを閉めても、窓の向こうで村人たちは同じ笑顔を浮かべたまま、こちらをじっと見つめ続けていた。