君の体温が欲しくて

窓ガラスが、ガタガタと悲鳴のような音を立てて揺れた。
コウの腕の中で少し落ち着きを取り戻した純太が、ふと顔を上げて窓の外を見る。いつの間にか、外は先が全く見えないほどの猛吹雪になっていた。

「……ひどい雪ですね。」

純太は少し困ったように眉を下げ、コウを見上げた。

「もしよければ、今日は泊まっていきますか?」

コウはコクリと無言で頷いた。家に帰ってあの息の詰まる祖父母と顔を合わせずに済むこと、そして何より、先生のそばにいられることが、今のコウにとっては一番の救いだった。

しかし、いざ寝る段になって、二人の間には気まずい空気が流れていた。
この古いあばら家には、来客用の布団など当然ない。薄い敷布団と掛け布団が、六畳間の真ん中にぽつんと一つだけ敷かれているのだ。

「……先生、俺、最近なんか寝つきが悪くてさ」

仰向けに並んで寝転がりながら、コウは天井の木目を数えるように誤魔化して言った。

「……そうですか。なら、温かいものでも飲みますか? 」

純太は身を起こすと、小さな台所へ向かった。小鍋でコトコトと何かを温める音がして、やがてマグカップを二つ持って戻ってきた。湯気を立てるホットミルクだ。

「ありがと」

コウは体を起こし、マグカップを受け取って一口飲んだ。

「……っ!! ぶっ……!!」

その瞬間、コウは思わず口に含んだ白い液体を盛大に吹き出した。
喉の奥を焼くような、強烈なえぐみと異常な苦味。牛乳の味など全くしない。

「ゲホッ、ゴホッ! なにこれ、にっが!! 先生、これ腐ってんじゃないの!?」
「えっ? そんなはずは……僕も同じものを飲みましたが、普通ですよ?」

純太は不思議そうに自分のマグカップを傾け、ゴクリと飲み込んだ。眉一つ動かさない。

「嘘だろ!? 絶対おかしいって! いつどこで買ったんだよこれ!」
「買ったわけではありません。これはいつも、校長先生から支給されている特別な牛乳で……栄養価が高いから残さず飲めと」

純太は不思議そうに首を傾げ、何でもないことのように自分のカップに口をつけた。白い液体が喉を通るたびに、彼の喉仏が静かに上下する。

「ほら、コウ君。せっかく温めたんですから、飲まないと体が温まりませんよ?」

涼しい顔で答える純太に、コウは舌を出してえずきながら抗議した。

「先生の舌がバカになってるのか、この牛乳が腐ってるのかの分かんないけど……水、水ちょうだい!口の中が呪われそうだ!」

「呪われるだなんて、失礼ですよ」

純太は困ったように笑いながら、コウのために水道水を汲みに台所へ向かった。

「……はぁ。もう、先生の出す飲み物は当分信じないからな」
「心外ですね。あんなに栄養満点なのに」

純太は悪びれる様子もなく、空になったマグカップを片付けた。