やがて焚き火の火も小さくなり、二人はストーブの焚かれた家の中へ戻った。
部屋の中はオレンジ色の光に包まれ、じんわりとした暖かさがコウの強張っていた体を解きほぐしていく。祖父母の家で常に感じていた、あの得体の知れない息苦しさや緊張感は、この隙間風の吹くボロ屋にはなぜか欠片もなかった。
(……なんか、この人といるとすげー楽だな)
ストーブの前に座り、まだ冷たい指先を擦り合わせながら、コウは斜め前で火加減を調整している純太の背中をぼんやりと見つめた。
先ほど雪だるま作りで散々ポンコツっぷりを発揮していたくせに、黒いセーター越しのその背中はどこか大人びていて、不思議な安心感がある。
もっとこの人に近づきたい。
張り詰めていた日常から解放されたこの心地よい空気の中でなら、ほんの少しだけ、子供みたいに寄りかかってみても許されるのではないか。
そんな、自分でも驚くほど素直で無防備な『甘えたい』という衝動が、胸の奥からふつふつと湧き上がってくる。凍えた指先を言い訳にして、コウはその温かそうな背中にすがりつきたくてたまらなくなった。
「先生、俺まだすげー寒くて。ちょっと温めてよ」
胸の奥の切実な欲求を悟られないよう、わざと冗談めかした軽い口調で笑いながら。
コウは背後からゆっくりと腕を伸ばし、無防備な純太の背中へと抱きつこうとした――その瞬間。
「……っ、触らないで!」
バシッ、と。
鋭い音を立てて、コウの手が激しく弾き飛ばされた。
「え……」
純太は弾かれたように後ずさり、ひどく怯えたような、そして拒絶に満ちた目でコウを見ていた。自らの体温の無さを――自分が死人のような身体であることを悟られるわけにはいかなかったのだ。
だが、そんな事情を知る由もないコウは、空中に取り残された自分の手と純太の顔を交互に見つめ、みるみるうちに傷ついた表情を浮かべた。
「……ごめんなさい。僕、人に触られるのが……あまり好きじゃなくて」
苦し紛れの嘘を吐く純太の言葉に、コウは「そっか。ごめん」とだけ短く呟き、気まずそうに俯いた。
その時のコウの悲しそうな顔を、純太は今でも忘れることができなかった。
部屋の中はオレンジ色の光に包まれ、じんわりとした暖かさがコウの強張っていた体を解きほぐしていく。祖父母の家で常に感じていた、あの得体の知れない息苦しさや緊張感は、この隙間風の吹くボロ屋にはなぜか欠片もなかった。
(……なんか、この人といるとすげー楽だな)
ストーブの前に座り、まだ冷たい指先を擦り合わせながら、コウは斜め前で火加減を調整している純太の背中をぼんやりと見つめた。
先ほど雪だるま作りで散々ポンコツっぷりを発揮していたくせに、黒いセーター越しのその背中はどこか大人びていて、不思議な安心感がある。
もっとこの人に近づきたい。
張り詰めていた日常から解放されたこの心地よい空気の中でなら、ほんの少しだけ、子供みたいに寄りかかってみても許されるのではないか。
そんな、自分でも驚くほど素直で無防備な『甘えたい』という衝動が、胸の奥からふつふつと湧き上がってくる。凍えた指先を言い訳にして、コウはその温かそうな背中にすがりつきたくてたまらなくなった。
「先生、俺まだすげー寒くて。ちょっと温めてよ」
胸の奥の切実な欲求を悟られないよう、わざと冗談めかした軽い口調で笑いながら。
コウは背後からゆっくりと腕を伸ばし、無防備な純太の背中へと抱きつこうとした――その瞬間。
「……っ、触らないで!」
バシッ、と。
鋭い音を立てて、コウの手が激しく弾き飛ばされた。
「え……」
純太は弾かれたように後ずさり、ひどく怯えたような、そして拒絶に満ちた目でコウを見ていた。自らの体温の無さを――自分が死人のような身体であることを悟られるわけにはいかなかったのだ。
だが、そんな事情を知る由もないコウは、空中に取り残された自分の手と純太の顔を交互に見つめ、みるみるうちに傷ついた表情を浮かべた。
「……ごめんなさい。僕、人に触られるのが……あまり好きじゃなくて」
苦し紛れの嘘を吐く純太の言葉に、コウは「そっか。ごめん」とだけ短く呟き、気まずそうに俯いた。
その時のコウの悲しそうな顔を、純太は今でも忘れることができなかった。
