「……今の、一体なんだったんだ……」
コウは震える指先をこめかみに押し当て、激しく打つ自分の鼓動を必死に抑え込もうとした。蛇口から出る氷のような水で顔を洗っても、あの硬く、冷たい感触が、掌にこびりついて離れない。生きている人間が、あんな温度をしているはずがないのだ。
動悸を抑えようと何度も水道水を飲み、ふと顔を上げて中庭の向こうを見る。
そこには、先ほど逃げ出したはずの純太が、校長と並んでゆっくりと廊下を歩いていた。
細身のスーツを隙なく着こなした、長身の校長。遠目にも非常に整った顔立ちをしているのがわかるが、夕暮れの光を反射するリムレスの眼鏡の奥には、微塵の温度も感じられない。どこか人間離れした、冷徹で無機質な空気を纏っている。
距離があり、窓越しの二人の会話はコウには一切聞こえない。
校長は純太に向かって何事かをつぶやき、満足げに喉を震わせると、そのまま角を曲がって闇の中へと消えていった。
「……あの二人、何喋ってたんだ?……」
コウが呟いた、その時だった。
廊下に一人残った純太が、まるで見計らっていたかのように、ゆっくりとこちらを振り向いた。中庭を挟んだ向かいの廊下。雪の照り返しで青白く照らされた純太の瞳が、真っ直ぐにコウを射抜く。
二人の視線が、凍てついた空気の中で音もなく交錯した。
コウは震える指先をこめかみに押し当て、激しく打つ自分の鼓動を必死に抑え込もうとした。蛇口から出る氷のような水で顔を洗っても、あの硬く、冷たい感触が、掌にこびりついて離れない。生きている人間が、あんな温度をしているはずがないのだ。
動悸を抑えようと何度も水道水を飲み、ふと顔を上げて中庭の向こうを見る。
そこには、先ほど逃げ出したはずの純太が、校長と並んでゆっくりと廊下を歩いていた。
細身のスーツを隙なく着こなした、長身の校長。遠目にも非常に整った顔立ちをしているのがわかるが、夕暮れの光を反射するリムレスの眼鏡の奥には、微塵の温度も感じられない。どこか人間離れした、冷徹で無機質な空気を纏っている。
距離があり、窓越しの二人の会話はコウには一切聞こえない。
校長は純太に向かって何事かをつぶやき、満足げに喉を震わせると、そのまま角を曲がって闇の中へと消えていった。
「……あの二人、何喋ってたんだ?……」
コウが呟いた、その時だった。
廊下に一人残った純太が、まるで見計らっていたかのように、ゆっくりとこちらを振り向いた。中庭を挟んだ向かいの廊下。雪の照り返しで青白く照らされた純太の瞳が、真っ直ぐにコウを射抜く。
二人の視線が、凍てついた空気の中で音もなく交錯した。
