古いブラウン管のテレビから、無機質な気象予報士の声が流れている。 『明日にかけて、山間部を中心に警報級の大雪となる見込みです。不要不急の外出は控え——』
隙間風が鳴る、古びた日本家屋の茶の間。 高校2年生のコウは、不機嫌そうに箸を突いていた。目の前には、山盛りのレバニラ炒めが湯気を立てている。
「ほらコウ、熱いうちに食べや。お前の好きなレバーやで」
「ばあちゃん、俺、レバー嫌いだって昨日も言ったじゃん。」
「……そうやったか? 」
祖母は少し呆けたように首を傾げた後、すぐにまたニコニコと笑ってコウの茶碗にレバニラを乗せた。最近、祖母は同じことを何度も忘れる。だが、次の一言だけは、まるで何かに取り憑かれたように毎日繰り返すのだ。
「まあええから、ぎょうさん食べや。冬はな、血の巡りが悪うなるんや。好き嫌いせんと全部食べて、『上質な血』を作らなあかんで。……ええ血ぃ、作らな」
「……だから血って、大袈裟だな」
「プハァ……ッ」
向かいの席では、祖父が缶ビールをあおり、だらしなくゲップをした。すでに3缶目で、顔が赤く染まっている。
「まあ、ばあさんの言う通りや。残さず食え。お前、最近部屋にこもって夜遅うまで勉強ばっかりしとるさかい、顔色悪いど」
「受験生なんだから普通だろ」
「チッ……。だいたいな、東京の大学なんか行く必要がどこにあるんや。親父の二の舞になる気か」
ビールの空き缶をドン、とテーブルに叩きつける祖父。
「せっかくこの村に引き取ってやったんや。この村の役場にでも入って、ずっとわしらとおったらええねん。なあ?」
同意を求められた祖母は、祖父の方を見るでもなく、ただ宙をぼんやりと見つめながら笑みを浮かべているだけだった。東京で育ったコウにとって、この茶の間の空気は粘りつくように重く、息が詰まる。同級生とはうまくやっているが、この家や村特有の閉鎖的な雰囲気には、どうしても馴染めなかった。
「……ごちそうさま。俺、勉強あるから」
コウは逃げるように席を立ち、冷え切った廊下へと足早に向かった。
隙間風が鳴る、古びた日本家屋の茶の間。 高校2年生のコウは、不機嫌そうに箸を突いていた。目の前には、山盛りのレバニラ炒めが湯気を立てている。
「ほらコウ、熱いうちに食べや。お前の好きなレバーやで」
「ばあちゃん、俺、レバー嫌いだって昨日も言ったじゃん。」
「……そうやったか? 」
祖母は少し呆けたように首を傾げた後、すぐにまたニコニコと笑ってコウの茶碗にレバニラを乗せた。最近、祖母は同じことを何度も忘れる。だが、次の一言だけは、まるで何かに取り憑かれたように毎日繰り返すのだ。
「まあええから、ぎょうさん食べや。冬はな、血の巡りが悪うなるんや。好き嫌いせんと全部食べて、『上質な血』を作らなあかんで。……ええ血ぃ、作らな」
「……だから血って、大袈裟だな」
「プハァ……ッ」
向かいの席では、祖父が缶ビールをあおり、だらしなくゲップをした。すでに3缶目で、顔が赤く染まっている。
「まあ、ばあさんの言う通りや。残さず食え。お前、最近部屋にこもって夜遅うまで勉強ばっかりしとるさかい、顔色悪いど」
「受験生なんだから普通だろ」
「チッ……。だいたいな、東京の大学なんか行く必要がどこにあるんや。親父の二の舞になる気か」
ビールの空き缶をドン、とテーブルに叩きつける祖父。
「せっかくこの村に引き取ってやったんや。この村の役場にでも入って、ずっとわしらとおったらええねん。なあ?」
同意を求められた祖母は、祖父の方を見るでもなく、ただ宙をぼんやりと見つめながら笑みを浮かべているだけだった。東京で育ったコウにとって、この茶の間の空気は粘りつくように重く、息が詰まる。同級生とはうまくやっているが、この家や村特有の閉鎖的な雰囲気には、どうしても馴染めなかった。
「……ごちそうさま。俺、勉強あるから」
コウは逃げるように席を立ち、冷え切った廊下へと足早に向かった。
