2225日後

 肉で肉を打擲する音。残虐だが、軽やかで、なんとも情けなく、生々しい。唐突に止まり、暖がおれの上で体を震わせる。硬直していたものが質量を増し、次に熱くぬめった液体が腹のなかに広がる。
 暖が出て行くと、つながっていた部分から白濁が滲み漏れた。おれは息を弾ませながら、額の汗を拭った。暖が隣に寝そべる。まだ上気した体を寄せてくる。
「なんで……」
「ん?」
 代わり映えしない天井の白を見上げながら、おれはぼんやり呟いた。
「なんでこうなったんだっけ……」
 おれの耳の裏に鼻先を圧しあてながら、暖はうんだかううんだか文字にならない言葉を吐いた。おれのせいにされるのではないかと思ったが、そうしなかった。暖はまどろみながらいった。
「おれのせい」
 おまえが運転操作をミスしたせいだ、といいかけたが、その前に、暖が続けた。
「おれがおまえに声かけたから」
 暖の顔を見ようとしたが、暖はもうほとんど眠りかけていた。肩を上下するペースが緩やかになり、やがて寝息が聞こえてきた。邪気のない寝顔だった。
「寝てんじゃねえよ……」
 肩口に預けられた頭を見下ろしながら、おれは小さく呟いた。まだ聞きたいことがあったのに。
 まあ、明日聞けばいいか。おれも疲れていた。しかし、眠気はすぐには訪れなかった。耽溺のなかでもなにか暗い予感めいたものが胸の奥で蠢いていた。無視できるのは性行為に溺れているときだけで、終わったとたんに絡め取られる。
 音のない狭い空間で、暖の寝息だけが聞こえる。暖がなにを考えているのか、その一部だけでも、いつかわかる日がくるのだろうか。