2225日後

「おまえ、ずっとここにいていいのかよ」
 暖が差し出した水を喉に入れながら、おれは尋ねた。もう1週間以上、おれたちはふたりともほとんどの時間服を着ずに過ごしていた。暖は1、2度食事を補充するために数時間外出しただけだった。
「政治家の先生がさぼってたらまずいんじゃないの」
「先生とかいうな」
 暖は心底不愉快そうな表情でいった。
「おまえには先生って呼ばれたくない」
「なんだよ、それ」
「いいから、呼ぶな」
「あっそ。わかったよ……」
 言葉の後半は暖の舌に絡め取られた。唾液が滑りこんできて、唇の端からあふれて顎をつたう。
 1カ月間なにもせずにいた時間を取りもどそうとするかのように、暖は執拗におれを求めた。相変わらず扱いだけはていねいだったから怪我をすることはなかったが、さすがに疲労困憊だった。それでも、拒むことはできなかった。あまりに切実で、緊迫していたからだ。
 この先、おれたちはどうなるんだろう。問いたかったが、できなかった。ただ、暖のすべてを受け容れていた。