絶対に告白させたい×絶対に告白しない幼なじみ

 午後10時。バイトが終わるなり、皆川さんは僕を引っ張ってファミレスに突撃した。4人席のはじっこでテキストとノートを広げているれいちゃんを見つけて、怯むことなく颯爽と声をかける。

「こんばんは、はじめまして~!」

 小難しい数式を解いていたれいちゃんが顔を上げる。

「鈴木くんと同じコンビニでバイトしてる皆川莉子で~す、よろしく! よかったら『みなりこ』って呼んでね」
「……こんばんは」

 れいちゃんはテキストを片付けながら皆川さんに挨拶を返して、じろりと僕を睨みつけた。明らかにご機嫌斜めだった。ちゃんとつきあってる子いるよって伝えたんだけど、と釈明する暇もなく、皆川さんはれいちゃんの向かいの席に座ってしまった。

「今度鈴木くんとラウワン行こって話になってるんだけど、一緒にどうかなって思って。もちろん彼女も一緒に。他にも友達呼んでもいいし」
「えっ、いや、まだ行くって決まってないし……!」
「あっ、ラウワンじゃなくてカラオケがいいって話だっけ?」
「えええ……」

 皆川さんが座るなら僕も座らなきゃダメかな、座るからには何かオーダーしなきゃいけないかな、でも時間が遅いからすぐ帰らなきゃ、と僕がおろおろしている間に話が進んでしまう。
 れいちゃんはそんな僕の腕を掴んで、隣に座らせた。

「――悪いけど、俺たちつきあってるから」

 皆川さんに向かってそう言いながら、れいちゃんは僕の肩に手を伸ばして抱き寄せた。
 ぽんぽん弾むように喋っていた皆川さんの口が「え」という形で静止する。僕も同じく「え」の口をして固まってしまう。
 ――え。ええ。えええ。そういう。そういう断り方?
 僕がれいちゃんの意図に気づいたのと同じタイミングで、静止していた皆川さんが再起動した。

「……あっ、ああ、そうなんだ……!」
「うん、そう。別に隠すことでもないけど、世の中いい人ばかりじゃないから。からかわれるのも嫌だし、不特定多数で遊ぶのはちょっと無理かな。できればそっとしておいて」

 さらりと嘘をつくれいちゃんに、皆川さんは首を大きく縦に振った。

「ああ、うん! そうだよね! いじられたくないよね! そしたらなんかごめん、私ってば先走って! ラウワン行こうっていうのも私が強引に言ってただけなんだよね、あはは! ごめんね、あははは……あは……人前でカムアウトさせちゃって本当にごめんなさい……」

 テンション高く話していた皆川さんのトーンが徐々に萎んでいく。人前で、という言葉に周囲を見回すと、僕たちに注目していた他のお客さんたちが一斉に目を逸らした。

「全然いいけど、一応秘密にしといて。なにかと面倒だから」

 にこりと笑うれいちゃんに、皆川さんは「絶対秘密にしとく!」と言って首を縦に振る。僕はれいちゃんに抱き寄せられたまま、ぎこちなく笑った。