声を張り上げて先陣を切る前園に続いてステージに上がる。秋晴れの空は雲ひとつない。俺たちが着ているクラスTも、空から切り取ってきたような澄んだ青だ。
1ーAを紹介するアナウンスが響く中、全員が配置につく。一瞬の静寂。最高のパフォーマンスを引き出せるだけの、適度な緊張感はある。大丈夫、やれる。深まる確信を後押しするようにイントロが流れ出す。もう何度も繰り返し頭と体に刻み込んだ音に、自然と反応する。
最初のステップ。滑り出しは好調。会場から歓声が上がる。これは単純にECLIPX(エクリプス)のファンが喜ぶ声だ。それでも反応があると嬉しい。
『Blue Sparkle』の振り付けは頻繁に立ち位置が入れ替わる。ダンサー全員がビートに乗って、曲の進行に合わせ、短く素早い動きで移動していく。練習の時と同じように、舞台にマークをつけてもらっているので混乱はない。前園も須藤も、さっきまでガチガチだったのが嘘みたいに動けている。
俺自身も、驚くほど体が軽い。体に流れる生体電流そのものになったみたいに、動きたいように動ける。周囲を見渡せるだけの冷静さと、ダンスに気持ちを載せる情熱が同時にある。
ステージから観客の顔って意外とよく見える。プレコーラスに差し掛かった瞬間、見つけた。ノアだ。
俺から見て右手側、前から4~5列目ぐらい。頬を上気させたノアと目が合う。ノアが握りしめているうちわには「れいちゃん撃って」と書いてある。撃てってなんだよ、これで合ってる? ばっちり目を合わせて、振り付けの合間に手でピストルを作ってノアを撃つ。わっとノアが笑顔になる。この表情を見られただけで、今までの努力が全部報われたと思う。
全体の動きが少し崩れてきたけれど、曲のメイン部分、コーラスに入る直前で持ち直す。一糸乱れぬ動き、とまではいかない。プロに劣る部分は元気さと愛嬌でカバーする。全力のキック、ジャンプ、ステップ。高さを揃えるのは最初から諦めて、自分たちにできる最高の動きをしようと決めた。
ひときわ大きな歓声が上がる。曲が流れ出した時とは明らかに違う、俺たちに対する声援だ。客席が盛り上がっているのが嬉しい。何より、ノアが見てくれているのが嬉しい。この舞台に立っている限り、ずっとノアに見てもらえる。だったらもう一生踊っていたい。それなのに曲は終わりに近づいてしまう。
2回目のコーラス。汗が吹き出る。息が切れてくる。だからこそ絶対に手を抜かない。
重心を低く。ヒット&ロール。視線と表情。刃物のように研ぎ澄ませた動きを意識。隙を見て手でピストルを作って、再びノアを撃つ。
踊ってみて、改めて痛感した。プロはマジですごい。このレベルの高いダンスパフォーマンスを維持しながら、さらに歌うなんて。俺は踊るだけで精一杯だ。
体全部を限界まで酷使しながら、思う。踊りの本質は祈りだ。願いを体で表現する。想いを届けるための、言葉以外の言語。
——好き。ノアのことが好きだ。
付き合いたいとか手をつなぎたいとかキスしたいとか一生一緒にいたいとか。俺はいつもそういうことにばかり気を取られがちだけれど。本当は、ノアが幸せならなんでもいい。ノアが笑っていられるなら、親友のままでだって構わない。
でもお願い。今は俺だけを見て。俺以外見ないで。
一瞬でいいから、俺がノアに惚れているよりも強く俺に惚れて。
ラスト。パシュ、という音とともに、ステージの左右からキャノン砲が発射される。宙を舞うメタルテープが、陽光を受けてキラキラと輝く。会場が揺れんばかりに沸く。
大喝采と大歓声の渦の中、俺はノアに向かって手を振る。ノアもうちわを振って「れいちゃーん!」と叫んでいる。可愛すぎてよろけそうになりながら舞台から降りる。踊り切ったクラスメイトたちとハイタッチを交わす。
ノアにモテたいがために努力した。動機はそれだけ。でも、こいつらと一緒に踊ったことは、卒業しても、きっとずっと忘れないと思う。
1ーAを紹介するアナウンスが響く中、全員が配置につく。一瞬の静寂。最高のパフォーマンスを引き出せるだけの、適度な緊張感はある。大丈夫、やれる。深まる確信を後押しするようにイントロが流れ出す。もう何度も繰り返し頭と体に刻み込んだ音に、自然と反応する。
最初のステップ。滑り出しは好調。会場から歓声が上がる。これは単純にECLIPX(エクリプス)のファンが喜ぶ声だ。それでも反応があると嬉しい。
『Blue Sparkle』の振り付けは頻繁に立ち位置が入れ替わる。ダンサー全員がビートに乗って、曲の進行に合わせ、短く素早い動きで移動していく。練習の時と同じように、舞台にマークをつけてもらっているので混乱はない。前園も須藤も、さっきまでガチガチだったのが嘘みたいに動けている。
俺自身も、驚くほど体が軽い。体に流れる生体電流そのものになったみたいに、動きたいように動ける。周囲を見渡せるだけの冷静さと、ダンスに気持ちを載せる情熱が同時にある。
ステージから観客の顔って意外とよく見える。プレコーラスに差し掛かった瞬間、見つけた。ノアだ。
俺から見て右手側、前から4~5列目ぐらい。頬を上気させたノアと目が合う。ノアが握りしめているうちわには「れいちゃん撃って」と書いてある。撃てってなんだよ、これで合ってる? ばっちり目を合わせて、振り付けの合間に手でピストルを作ってノアを撃つ。わっとノアが笑顔になる。この表情を見られただけで、今までの努力が全部報われたと思う。
全体の動きが少し崩れてきたけれど、曲のメイン部分、コーラスに入る直前で持ち直す。一糸乱れぬ動き、とまではいかない。プロに劣る部分は元気さと愛嬌でカバーする。全力のキック、ジャンプ、ステップ。高さを揃えるのは最初から諦めて、自分たちにできる最高の動きをしようと決めた。
ひときわ大きな歓声が上がる。曲が流れ出した時とは明らかに違う、俺たちに対する声援だ。客席が盛り上がっているのが嬉しい。何より、ノアが見てくれているのが嬉しい。この舞台に立っている限り、ずっとノアに見てもらえる。だったらもう一生踊っていたい。それなのに曲は終わりに近づいてしまう。
2回目のコーラス。汗が吹き出る。息が切れてくる。だからこそ絶対に手を抜かない。
重心を低く。ヒット&ロール。視線と表情。刃物のように研ぎ澄ませた動きを意識。隙を見て手でピストルを作って、再びノアを撃つ。
踊ってみて、改めて痛感した。プロはマジですごい。このレベルの高いダンスパフォーマンスを維持しながら、さらに歌うなんて。俺は踊るだけで精一杯だ。
体全部を限界まで酷使しながら、思う。踊りの本質は祈りだ。願いを体で表現する。想いを届けるための、言葉以外の言語。
——好き。ノアのことが好きだ。
付き合いたいとか手をつなぎたいとかキスしたいとか一生一緒にいたいとか。俺はいつもそういうことにばかり気を取られがちだけれど。本当は、ノアが幸せならなんでもいい。ノアが笑っていられるなら、親友のままでだって構わない。
でもお願い。今は俺だけを見て。俺以外見ないで。
一瞬でいいから、俺がノアに惚れているよりも強く俺に惚れて。
ラスト。パシュ、という音とともに、ステージの左右からキャノン砲が発射される。宙を舞うメタルテープが、陽光を受けてキラキラと輝く。会場が揺れんばかりに沸く。
大喝采と大歓声の渦の中、俺はノアに向かって手を振る。ノアもうちわを振って「れいちゃーん!」と叫んでいる。可愛すぎてよろけそうになりながら舞台から降りる。踊り切ったクラスメイトたちとハイタッチを交わす。
ノアにモテたいがために努力した。動機はそれだけ。でも、こいつらと一緒に踊ったことは、卒業しても、きっとずっと忘れないと思う。
