絶対に告白させたい×絶対に告白しない幼なじみ

*side零

「よっしゃオラ~! 絶対モテる! カッコよく踊りまくって成宮の彼女を略奪するぞ~! えいえいおー!」

 文化祭当日。俺たちのクラスの出番まであと少し。前園の掛け声に、円陣を組んだクラスメイトたちは声を揃えて「おー!」と叫ぶ。俺だけ蚊帳の外だがまあいい。俺を仮想敵として、みんな一致団結して努力を重ねてきた。素人芸にしてはかなりの完成度になったと思う。
 校庭に組まれた特設ステージの前には多くの観客が集まっていた。
 俺たちの出番のあとは文化祭で一番盛り上がるイベント、軽音部のバンド演奏が控えている。ほとんどの来客がステージ前に集中しているのはそのせいだ。
 今は3年生クラスがコントをやっている。観客席から届く笑い声の感じからして、結構ウケているらしい。ステージ横の待機スペースから客席の様子を窺う俺に、前園が絡んでくる。

「お~ん? 緊張してるんですか成宮くん? 彼女の前でド派手に失敗して赤っ恥かきそうだから? ふられちゃったらどうしようって泣きそうなんですか~???」
「膝ガクガクさせながらよく煽れるな」
「何言ってんの、これはむしゃぶぶい、むしゃるるぶい、む、武者震いだっつーの」
「すげー噛み方」

 ガチガチに緊張している前園の様子が面白くて、つい笑ってしまう。ダンスをやりたいと言い出したのも、くじ引きで大トリ直前の出番を引き当てたのも前園なので全部自業自得だ。
 普段はツッコミ役の須藤も黙ったまま。緊張している2人を微笑ましく思いながら煽り返す。

「まあいいじゃん、お前ら彼女いないし失うものなど何もないだろ。そもそも誰もお前らのことなんか見ないから緊張する意味ない」
「わかりました、本番終わったらお前を殺します」
「成し遂げるからな……完全犯罪……」

 緊張よりも殺意が上回ったのか、前園と須藤はスンッとした顔でストレッチを始めた。こいつらはなんだかんだで本番に強いから問題ない。心配なのは寺田くんだった。あがり症の寺田くんは顔面蒼白で固まっている。緊張をほぐすために軽く肩を叩くと、寺田くんはそれだけで飛び上がった。

「なっ、なっ、成宮くん……! 僕、やっぱり抜けたいかも……!」
「寺田くんがどうしても楽しめなさそうなら、それでも仕方ないと思うけど……でも寺田くんの両隣、佐山と李じゃん? ふたりともすげー上手いから、引っ張り上げてもらえると思うよ」

 俺が名指しした佐山と李がドヤ顔をする。実力者と一緒に踊ると、自分一人のとき以上の動きができる。先生や健ちゃんとの練習で理解した。
 不安そうにしていた寺田くんは、佐山と李に「一緒にやろうよ」「成宮ばっかりいいかっこさせられねえし」と励まされ、ステージに上がる覚悟が決まったようだった。頬に赤みが差してきた寺田くんは俺に顔を向けた。

「な、成宮くんは、全然緊張してないね……」
「ああ、うん。緊張もあるけど、それより楽しみで仕方ない」

 これまでの地道で過酷な訓練に比べたら、本番なんて最高すぎる。やれるだけのことはやってきた。あとはすべてを出し切るだけ。
 ——やっとノアに見てもらえる。そう思うだけで胸が高鳴る。
 コントが終わり、一段と大きな笑いと拍手が湧き起こる。次は俺たちの出番。照明や音響を担当してくれる裏方のクラスメイトたちはすでに配置についている。ステージ運営を担当している先輩が俺たちの出番を知らせる。

「おっしゃ! 行くぞ1ーA!」