絶対に告白させたい×絶対に告白しない幼なじみ



 れいちゃん――成宮零。家が近所で、生まれたときからの幼なじみ。母親同士の仲が良くて、物心つく前から一緒にいた。幼稚園と小学校も一緒。れいちゃんは私立中学に進学したのでそこから進路は分かれた。それでもれいちゃんとの親交は相変わらず続いている。
 そんな僕たちも来月から高校生になる。今は3月末。中学は卒業したけどまだ高校生ではない、中途半端な時期。僕たちはどこへ行くでもなくネトフリで映画を観ていた。

 れいちゃんと一緒にいると「いつも通り」という感じがするけれど、この春から僕の環境は大きく変化している。父さんの海外赴任が決まり、家族は父さんと一緒に海外へ。僕は進学のため日本に残ったので、これから数年は一人暮らしだ。
 正直、不安よりもわくわくする気持ちの方が大きい。憧れの一人暮らし。れいちゃんがいてくれるから家族がいなくても寂しくないし。
 そんな頼もしいれいちゃんは、画面から目を離さずにわがままを言った。

「喉乾いた。炭酸ない? コーラがいい」
「え~? なんかあったかな……」

 しぶしぶソファから腰を上げてキッチンに向かう。水出しの麦茶なら常備している。とりあえず麦茶でいいよね、と思いながら冷蔵庫を開けると、ドアポケットの白い紙パックが目に入った。
 ――これの存在をすっかり忘れていた。
 500mlの紙パックに入った牛乳。無意識にこれのことを考えていたから昔のことを夢に見たに違いない。存在を抹消すべく牛乳パックとグラスを持ってリビングに戻ると、れいちゃんはあからさまに嫌そうな顔をした。

「ノア牛乳嫌いじゃん。なんであんの」
「TikTok見てたらパンケーキが出てきて。食べたくなったから作ったんだよね。その時の材料の余り」

 牛乳は嫌いだけど、料理に入ってる分には問題ない。
 動画に出てきたパンケーキに触発されて、真似して作った。積み重ねたパンケーキに、ハニーコームナッツバターをのせて。苺とさくらんぼを好きなだけ盛りつけて、メープルシロップをたっぷり。
 撮っておいた写真と動画を見せると、僕のスマホを覗き込んだれいちゃんが叫んだ。

「何これ超うまそう! 呼べよ俺を」
「だって朝早かったから」
「何時?」
「5時」
「早すぎジジイか」

 思いついたら即実行できるのが一人暮らしのいいところ。24時間営業のスーパーに行って材料を買い集めて、サッと作った。そして余った牛乳をスッとれいちゃんに押し付ける。

「いや、いらないし」
「でももう当分パンケーキは食べたくないし、使う予定もないし。もったいないから飲んで」
「いらない、俺も牛乳嫌いだから。臭いが絶対無理」

 れいちゃんがそう言った瞬間、画面に映った主要登場人物が死んだ。ふたりそろって「あー」と声に出す。まさかここでこのキャラが脱落するとは思わなかった。無念に思いながら視線を牛乳パックに移す。
 ふーんそうか、れいちゃんも牛乳嫌いだったのか。付き合い長いのに知らなかったな。
 ――っていうか。

「れいちゃん、給食の時は牛乳飲んでたよね? 絶対無理ではなくない?」
「マジで絶対無理。給食の時はいつも健ちゃんに飲んでもらってた」
「へー……」

 ふーん。
 そうだったんだ。
 そうか。そんな。――そんなんおかしくない?