*side零
日直の仕事を終えて教室に戻ると、ダンスの練習をするために残ったメンバーがだらけていた。机をすべて下げた教室の真ん中で、「真剣にダンスやったら絶対モテる」と主張していた前園だけが元気に大声を出している。
「文化祭で女子と仲良くなるきっかけ作ってぇ! クリスマスまでには絶対彼女作るぞ~! えいえいおー!」
返ってくるのは生返事。気のいい寺田くんだけは、かけ声に合わせて遠慮がちに片腕をあげていた。盛り上がらない面々に、前園はさらに声を張り上げる。
「いやいや、みんなどしたん? 俺の華麗なプレゼンに強く惹かれて、満場一致でダンスやることに決まったわけでしょ? もっとやる気出していこ!」
「記憶の改竄やばいて」
暑苦しい前園に、チャラい須藤がヘラヘラ笑いながらツッコミを入れる。
俺を含め、メインで踊ることになったメンバーはとりあえず全員いる。でも他のクラスメイトは部活や勉強を優先していて、居残りしているのは約半数。
イベントにかける情熱は人それぞれ。全員に同じ熱量を求めるのは無理がある。俺はとりあえずジャージに着替え、音響担当に『Blue Sparkle』を再生してほしいと頼んだ。教卓に置かれたポータブルスピーカーから、爽やかなシンセポップが流れ出す。俺は前園を押しのけて、覚えた振り付けを一通りなぞった。
疾走感のあるリズムに合わせて、体全体を使って大胆に、指先まで意識して繊細に。キャッチーな高音ボーカルのサビ部分は特に力を入れて。まだまだ完成度が高いとは言えないが、踊り切るとどよめきが湧き起こった。
「すげー」「エモい」「むしろメロい」などの賛辞が集まる中、なぜか前園がつっかかってくる。
「ちょっと待てよ。なんだ今のキレッキレな動きはよぉ」
「やる気があっても文句言うのかよ」
「当たり前だろ! 顔整いは目立たないよう三歩下がって影に徹しろとあれほど言っただろうが! てゆうかもうメインやめてバックダンサーやれや!」
俺にメインメンバーになれと迫ってきたのは前園なので本当に記憶の改竄がやばい。クラスメイトが前園にブーイングをかます。
最初は渋々引き受けた。だが俺はソジュンのポジションで踊ってソジュンを超えると決めた。ノアにモテるために。
ブーイングが収まるのを待ってから、俺は声を張った。
「悪いけど、つきあってる子が文化祭見に来るから。絶対メインやるのでよろしく」
俺の言葉に、恋愛トーク命の須藤がすかさず口を挟む。
「おっ! 例の幼なじみちゃん!? 黒髪サラサラロングの清楚系で!? アイドルオーディション受けたらグランプリ間違いなしという噂の美少女!?」
美少女とかいうのは全部須藤の妄想だ。だがここはあえて否定しない。だらしなく壁際に座り込んでいたやつらも興味を抱いて俺に注目している。俺は全員の顔を見渡してから鼻で笑った。
「まあそういうわけなので、俺は惚れ直してもらうために本気でやるから。お前たちは適当に踊って俺の引き立て役になってください」
わかりやすく挑発すると、今度は俺に向けて大ブーイングが起こった。前園は怒りすぎて涙目になっている。
「おいコラ成宮ァ! お前お前お前コラァアア! 彼女いるからって見下してんじゃねえよ、泣いちゃうだろ!」
「これはアレだな……俺らがムチャクチャかっこよく踊って、成宮の彼女を惚れさすしかねえな……」
「それだ! 成宮の彼女をぉお! 略奪したるからなぁアア! やってやんよオラァ!!」
前園と須藤がはしゃぎ出すと、周囲のやつらも同調して騒ぎ始めた。凄まじい一体感だ。俄然やる気を出したクラスメイトたちは、さっきまでだらけていたのが嘘のようにキビキビと練習を始めた。
挑発がうまく効いてよかった。俺だけやる気を出しても悪目立ちしてしまう。全体のレベルは高い方がいい。
一致団結したクラスメイトたちの勢いは止まることなく、他のクラスの生徒が「なんか1-Aの様子がおかしい」とのぞきにくるほどだった。
日直の仕事を終えて教室に戻ると、ダンスの練習をするために残ったメンバーがだらけていた。机をすべて下げた教室の真ん中で、「真剣にダンスやったら絶対モテる」と主張していた前園だけが元気に大声を出している。
「文化祭で女子と仲良くなるきっかけ作ってぇ! クリスマスまでには絶対彼女作るぞ~! えいえいおー!」
返ってくるのは生返事。気のいい寺田くんだけは、かけ声に合わせて遠慮がちに片腕をあげていた。盛り上がらない面々に、前園はさらに声を張り上げる。
「いやいや、みんなどしたん? 俺の華麗なプレゼンに強く惹かれて、満場一致でダンスやることに決まったわけでしょ? もっとやる気出していこ!」
「記憶の改竄やばいて」
暑苦しい前園に、チャラい須藤がヘラヘラ笑いながらツッコミを入れる。
俺を含め、メインで踊ることになったメンバーはとりあえず全員いる。でも他のクラスメイトは部活や勉強を優先していて、居残りしているのは約半数。
イベントにかける情熱は人それぞれ。全員に同じ熱量を求めるのは無理がある。俺はとりあえずジャージに着替え、音響担当に『Blue Sparkle』を再生してほしいと頼んだ。教卓に置かれたポータブルスピーカーから、爽やかなシンセポップが流れ出す。俺は前園を押しのけて、覚えた振り付けを一通りなぞった。
疾走感のあるリズムに合わせて、体全体を使って大胆に、指先まで意識して繊細に。キャッチーな高音ボーカルのサビ部分は特に力を入れて。まだまだ完成度が高いとは言えないが、踊り切るとどよめきが湧き起こった。
「すげー」「エモい」「むしろメロい」などの賛辞が集まる中、なぜか前園がつっかかってくる。
「ちょっと待てよ。なんだ今のキレッキレな動きはよぉ」
「やる気があっても文句言うのかよ」
「当たり前だろ! 顔整いは目立たないよう三歩下がって影に徹しろとあれほど言っただろうが! てゆうかもうメインやめてバックダンサーやれや!」
俺にメインメンバーになれと迫ってきたのは前園なので本当に記憶の改竄がやばい。クラスメイトが前園にブーイングをかます。
最初は渋々引き受けた。だが俺はソジュンのポジションで踊ってソジュンを超えると決めた。ノアにモテるために。
ブーイングが収まるのを待ってから、俺は声を張った。
「悪いけど、つきあってる子が文化祭見に来るから。絶対メインやるのでよろしく」
俺の言葉に、恋愛トーク命の須藤がすかさず口を挟む。
「おっ! 例の幼なじみちゃん!? 黒髪サラサラロングの清楚系で!? アイドルオーディション受けたらグランプリ間違いなしという噂の美少女!?」
美少女とかいうのは全部須藤の妄想だ。だがここはあえて否定しない。だらしなく壁際に座り込んでいたやつらも興味を抱いて俺に注目している。俺は全員の顔を見渡してから鼻で笑った。
「まあそういうわけなので、俺は惚れ直してもらうために本気でやるから。お前たちは適当に踊って俺の引き立て役になってください」
わかりやすく挑発すると、今度は俺に向けて大ブーイングが起こった。前園は怒りすぎて涙目になっている。
「おいコラ成宮ァ! お前お前お前コラァアア! 彼女いるからって見下してんじゃねえよ、泣いちゃうだろ!」
「これはアレだな……俺らがムチャクチャかっこよく踊って、成宮の彼女を惚れさすしかねえな……」
「それだ! 成宮の彼女をぉお! 略奪したるからなぁアア! やってやんよオラァ!!」
前園と須藤がはしゃぎ出すと、周囲のやつらも同調して騒ぎ始めた。凄まじい一体感だ。俄然やる気を出したクラスメイトたちは、さっきまでだらけていたのが嘘のようにキビキビと練習を始めた。
挑発がうまく効いてよかった。俺だけやる気を出しても悪目立ちしてしまう。全体のレベルは高い方がいい。
一致団結したクラスメイトたちの勢いは止まることなく、他のクラスの生徒が「なんか1-Aの様子がおかしい」とのぞきにくるほどだった。
