絶対に告白させたい×絶対に告白しない幼なじみ

*side乃碧

 夏休みに入ってすぐの土日は毎年恒例、地元の夏祭り。
 町内中のスピーカーから陽気な祭囃子が流れ、紅白の提灯が風に揺れる。商店街や神社の参道沿いにはずらりと出店が並び、漆や金箔があしらわれた山車も出る。近隣住人だけではなく、遠くから観光に来る人もいるほど盛大なお祭りだ。
 町内から集まった有志は祭りを成功させるために団結し、普段は隠居しているようなお年寄りたちまでもが元気に活動している。僕も留守にしている両親に代わって手伝いに駆り出されていた。
 担当しているのは子供山車の警備。子供たちのかけ声と太鼓の音に合わせてピッピと笛を吹きつつ、コースから外れないように誘導していく。
 まだ比較的涼しい午前中。神社を出て町内を練り歩き、お昼前にはまた神社へ戻る予定だ。

「もっと声出していこう! よいやさー!」
「よいやさー! よいやさー!」

 僕と同じく、山車を挟んだ反対側で警備をしているれいちゃんが声をかけると、鯉口シャツや腹掛けを着込んだ子供達が元気に応答した。
 子供の頃は僕たちも山車を引いていた。毎年お祭りの日は当たり前のようにれいちゃんと一緒にいて、今も一緒にいる。そのことが、なんだかとても眩しく思えた。

 徐々に気温が上がる中、誰も脱落することなく神社にたどり着く。木遣り唄の後に一本締めをすると、子供達の保護者や見物客たちから拍手と歓声が上がった。
 手伝いをしていた僕たちもこれでお役御免。子供達にお茶とご褒美のお菓子を配り終えてほっと息をついていたら、れいちゃんが冷えたペットボトルを僕の首筋にぴたりとくっつけた。

「うひょええっ! 冷たい!」
「これノアの分ね」

 も~すぐいたずらする、と抗議しながらペットボトルのフタを開ける。キンキンに冷えたポカリスウェットが胃に行き渡ると、軽くめまいがした。
 神社のはじっこ、木漏れ日の下。縁石に2人並んで腰を落ち着けて休憩する。
 祭装束って結構暑い。僕たちも鯉口シャツと又引きを着込んでいる。僕はむちゃくちゃ汗をかいているのに、れいちゃんは涼しい顔をしていた。
 どんな服を着ていてもれいちゃんはかっこいい。知ってる。子供の頃から一緒にいるんだから。それでも最近は、れいちゃんのことが、なんだか違って見える。
 きっかけはTikTokで見たインタビュー動画。はっきりと自覚したのは、ついこの前。終業式の日。健ちゃんと一緒にいたとき、僕が不良に絡まれていると勘違いして助けに入ってくれたれいちゃんが。すごく。すごく格好よくて。ヒーローみたいだった。幼なじみがこんなにも格好いいことある? まあそのあといじめられたんだけど。
 ——やばかったな。好きになっちゃうところだった。
 だってあんなの恋愛ドラマでしかやらないじゃん。壁ドンみたいな。僕は幼なじみだから耐性がついてるけど、他の人がやられたら絶対恋に落ちちゃうやつ。
 僕をかばってくれたれいちゃんの背中は大きくて。僕だってそんなに身長は変わらないのに、すごく頼もしかった。
 そんなことを考えながらぼんやりとれいちゃんの横顔を盗み見ていたら、れいちゃんが不意に僕の方を向いた。