絶対に告白させたい×絶対に告白しない幼なじみ


 
 ――小学生のころの、苦い思い出。
 高校からは学食かお弁当。牛乳は必須じゃないし、飲めないからといって居残りを命じられることもない。それなのに僕は小学校の教室にいて、ひとりでぽつんと自分の席に座っていた。
 夕日に染まる黒板。落書きだらけの机。その上には忌まわしい牛乳パック。
 あれ、これは健ちゃんが飲んでくれたはずじゃなかったかな。他のみんなはどこに行ったんだろう。

「ノア、また居残り?」

 声のした方を振り向くと、そこにはれいちゃんがいた。小学生のころよりもぐっと背が伸びて、格好良さにますます磨きがかかった現在のれいちゃん。
 どうしてだろう、なんで僕たちはこんなところにいるんだろう。首を傾げる僕に構わず、れいちゃんは牛乳パックにストローを刺して僕に差し出した。

「俺のこと好きなんだろ? じゃあ飲めよ、ほら……」

 いや確かにれいちゃんのことは今でも大好きだし憧れてるけど牛乳は無理。逃げようとしたのに、手足が鉛になったみたいに重くて思うように動かない。なんで? どうなってんの? れいちゃんはアイドル顔負けの整った顔に上品な微笑みを浮かべている。ストローの先端から白い液体があふれて、僕の唇が濡れて――――。


「ん゛……う゛んぅんん……」
「ノア……おい、ノア。大丈夫か」
「あばぶっ!」

 れいちゃんに肩をゆすられて目が覚める。とっさに周囲を見渡す。そこは小学校の教室ではなくて、住み慣れた僕の家のリビングだった。僕に牛乳を押しつけていたはずのれいちゃんは、呆れた顔で僕を見ている。
 年季の入ったソファの上。どうやら僕はうたた寝をしていたらしい。

「すっごいうなされてたけど。大丈夫?」
「う、うん……大丈夫……ちょっと変な夢見ただけ……」
「まあ、こんな映画観ながら寝落ちしたら悪夢も見るわな」

 テレビの画面にはゾンビがうじゃうじゃと湧いていた。早戻しする? と尋ねてくるれいちゃんに向かって首を横に振る。
 夢の内容について追求されなくてほっとした。この歳になっても牛乳ごときの夢でうなされたなんて知られたら絶対馬鹿にされる。
 それにしても生々しい夢だった。本当に唇が牛乳で濡れているような気がする。僕は口元に手をやりながら、映画に見入っているれいちゃんの横顔を盗み見た。