「おん? スズキノくん、どしたん?」
「んー、ちょっと……」
声の発生源はすぐにわかった。僕の席の右隣、ひとつ後ろの席。ギャルの子たちが見ているスマホ。
「あの、いきなりごめんなんだけど」
僕が話しかけると、きゃっきゃと盛り上がっていたギャルの子達が一斉に僕を見た。集まっているのは5人。そのうちの1人、机に座っている子が返事をしてくれた。
「なんだっけ、ススキノくん?」
「おしい、鈴木乃碧。スズキノ。あのさ、今見てたのって動画? なんか友達の声にめちゃくちゃ似てて」
「そうなん~? TikTokでバズってるやつだけど。スズキノくんも見とく?」
親切に差し出してくれたスマホの画面を見ると、そこには間違いなくれいちゃんが映っていた。
「やっぱりれいちゃんだ!」
「おっ、マジの友達?」
「うん、そう。おさな――」
『幼なじみとつきあってます』
僕の声に、スマホのスピーカーから放たれたれいちゃんの声が重なる。画面の中のれいちゃんはインタビューを受けているようだった。幼なじみとつきあってるって——僕と? この前の設定の話? 僕の理解が追いつく前に、れいちゃんは「幼なじみの好きなとこを10個言ってください」という質問に答え始めた。
そこから一切つかえることなく、立て板に水を流すようにスラスラと語られる「好きなとこ」。動画が終わると、ギャルの子たちは一斉に「フッフゥ~」「やばすぎ」と歓声をあげた。
「スズキノくんの友達すごくない? この顔でベタ惚れしてる相手どんなんよ。スズキノくんも知ってる子?」
「でもこんなの仕込みだよって話してたんだけど、この子フツーに芸能人でしょ?」
「絶対そうだって、だっていきなりこんな質問されて答えられる奴いなくない? あーし彼氏の好きなとこ一個も言えねえ」
「それは別れろよ」
ギャルの子達がどっと笑う。僕も愛想笑いを浮かべながら、答えられる質問にだけ答える。
「芸能人では、ないけど……」
「えっ、じゃあ仕込みじゃないってこと?」
「台本とかなし? それでこの勢い? 熱愛すぎでしょ~クソうらやましい」
「よっぽど好きじゃないとこんなには出てこないよね。相手のことよく見てるんだな~」
「『泣きそうなのを我慢してる時の口元』ってなに? 急にエッチな話?」
「やばいメイク直さなきゃ! リプモン塗っとこ!」
なぜかメイクをしだすギャルの子たちを眺めながら、動画の内容を思い返す。いや。だってあんなの。僕のことじゃなくて、なんか架空の? 設定上の恋人の話を適当に言っただけだよね? 僕のことなわけないよね?
思わず口元を隠してしまった僕を見て、椅子に座っていたギャルの子が声をあげた。
「待って、スズキノくんめちゃ顔赤いんだけど!?」
「やばいじゃん、ときめいちゃった!? キュン死寸前ってコト?」
「嘘でしょピュアすぎ! ちょっとスズキノくんの友達の人! 保健室連れてってあげないと死ぬよこれ」
「や、や、大丈夫! 見せてくれてありがとう」
「いいよいいよ~シェアしてあげようか?」
「あっ、じゃあ、お願いします……」
れいちゃんの動画をシェアしてもらってから前に向き直ると、取り残してしまっていたかみやんはがっしりと僕の腕を掴んで詰め寄ってきた。
「すっ、すっ、スズキノくん! いきなり何してんだよ!」
「えっ?」
「急に! ギャルと! 話すとか! 貴様さては陽キャか? 絶対俺と同じ陰キャだと思ってたのに!」
「えっ、えっ、だって普通に同じクラスの人じゃん」
「やはり貴様、根は陽キャか……!」
僕もどちらかと言えば陰キャだと思うけど、そんな釈明をする間もなく先生が教室に入ってきたのでかみやんも前を向いた。
「んー、ちょっと……」
声の発生源はすぐにわかった。僕の席の右隣、ひとつ後ろの席。ギャルの子たちが見ているスマホ。
「あの、いきなりごめんなんだけど」
僕が話しかけると、きゃっきゃと盛り上がっていたギャルの子達が一斉に僕を見た。集まっているのは5人。そのうちの1人、机に座っている子が返事をしてくれた。
「なんだっけ、ススキノくん?」
「おしい、鈴木乃碧。スズキノ。あのさ、今見てたのって動画? なんか友達の声にめちゃくちゃ似てて」
「そうなん~? TikTokでバズってるやつだけど。スズキノくんも見とく?」
親切に差し出してくれたスマホの画面を見ると、そこには間違いなくれいちゃんが映っていた。
「やっぱりれいちゃんだ!」
「おっ、マジの友達?」
「うん、そう。おさな――」
『幼なじみとつきあってます』
僕の声に、スマホのスピーカーから放たれたれいちゃんの声が重なる。画面の中のれいちゃんはインタビューを受けているようだった。幼なじみとつきあってるって——僕と? この前の設定の話? 僕の理解が追いつく前に、れいちゃんは「幼なじみの好きなとこを10個言ってください」という質問に答え始めた。
そこから一切つかえることなく、立て板に水を流すようにスラスラと語られる「好きなとこ」。動画が終わると、ギャルの子たちは一斉に「フッフゥ~」「やばすぎ」と歓声をあげた。
「スズキノくんの友達すごくない? この顔でベタ惚れしてる相手どんなんよ。スズキノくんも知ってる子?」
「でもこんなの仕込みだよって話してたんだけど、この子フツーに芸能人でしょ?」
「絶対そうだって、だっていきなりこんな質問されて答えられる奴いなくない? あーし彼氏の好きなとこ一個も言えねえ」
「それは別れろよ」
ギャルの子達がどっと笑う。僕も愛想笑いを浮かべながら、答えられる質問にだけ答える。
「芸能人では、ないけど……」
「えっ、じゃあ仕込みじゃないってこと?」
「台本とかなし? それでこの勢い? 熱愛すぎでしょ~クソうらやましい」
「よっぽど好きじゃないとこんなには出てこないよね。相手のことよく見てるんだな~」
「『泣きそうなのを我慢してる時の口元』ってなに? 急にエッチな話?」
「やばいメイク直さなきゃ! リプモン塗っとこ!」
なぜかメイクをしだすギャルの子たちを眺めながら、動画の内容を思い返す。いや。だってあんなの。僕のことじゃなくて、なんか架空の? 設定上の恋人の話を適当に言っただけだよね? 僕のことなわけないよね?
思わず口元を隠してしまった僕を見て、椅子に座っていたギャルの子が声をあげた。
「待って、スズキノくんめちゃ顔赤いんだけど!?」
「やばいじゃん、ときめいちゃった!? キュン死寸前ってコト?」
「嘘でしょピュアすぎ! ちょっとスズキノくんの友達の人! 保健室連れてってあげないと死ぬよこれ」
「や、や、大丈夫! 見せてくれてありがとう」
「いいよいいよ~シェアしてあげようか?」
「あっ、じゃあ、お願いします……」
れいちゃんの動画をシェアしてもらってから前に向き直ると、取り残してしまっていたかみやんはがっしりと僕の腕を掴んで詰め寄ってきた。
「すっ、すっ、スズキノくん! いきなり何してんだよ!」
「えっ?」
「急に! ギャルと! 話すとか! 貴様さては陽キャか? 絶対俺と同じ陰キャだと思ってたのに!」
「えっ、えっ、だって普通に同じクラスの人じゃん」
「やはり貴様、根は陽キャか……!」
僕もどちらかと言えば陰キャだと思うけど、そんな釈明をする間もなく先生が教室に入ってきたのでかみやんも前を向いた。
