それからも他愛のない会話をして。デザートも食べ終わって。そろそろ帰らなきゃな、というタイミングでノアが声を上げた。
「あっ、そうだ、忘れるところだった」
ノアがいつも使っているリュックから取り出したのは、猫のぬいぐるみだった。
「これ誕生日プレゼント」
差し出された猫と目が合う。澄んだ青空を切り取って縫いつけたような青い目。毛色はグレー。手のひらからはみ出すぐらいの大きさで、カラビナが付いている。俺がグレーの猫を受け取ると、ノアはもうひとつ猫のぬいぐるみを取り出した。
「かわいくない? 僕も色違いで同じやつ買っちゃった。スクバにつけようと思って」
ノアが両手でゆるく持ち上げて見せたのは、俺がもらったのと同じデザインの三毛猫だった。
かわいくない? って言われても。かわいいのはノアだろ。食事の他にもプレゼントがあるとは思わなかったんだが? しかもイロチでおそろい? は? 最高か?
嬉しさが渋滞して声が出ない。黙り込んでしまった俺を見て、ノアは悲しげに眉尻を下げた。
「……あんまり好きじゃない? ていうか、よく考えたらこの歳でおそろいとかないか……」
「ある!」
「えっ!?」
「全然ある。ありだから。いいじゃん。好き。すっげえ気に入った。俺もスクバにつけるわ。ありがとう、大事にする」
思わず前のめりになってしまった。ないわけない。ありに決まっている。スクバにイロチでおそろのぬいぐるみをつけるとか、実質つきあってると言っても過言ではない。いや過言か。少なくとも他の友人知人とは絶対しない。でもノアとならありだ。むしろノアとしかしたくない。
興奮しすぎて気持ち悪いぐらいテンションが上がってしまったが、しょぼんとしていたノアは安心したようにほわっと笑った。
「ほんと? よかった〜」
プレゼントをもらった側の俺が喜ぶのは当然だが、贈ったノアの方が嬉しそうな顔をしている。
ノア的には、「おそろい」に深い意味があってのことではないのだと思う。小学生の時はランドセルにおそろいのキーホルダーをつけたりしていた。だからその延長。仲のいい友達の証。それでも嬉しい。
ノアは俺が手にしたグレーの猫を指先でつついた。
「この子さぁ、なんかれいちゃんぽくない? ぬいぐるみなのに目元がキリッとしててかっこいいな〜と思って」
「――そう?」
「まあ本物の方がかっこいいけど」
サラッと俺のことを褒めるノアに、ぐっと愛おしさが込み上げる。俺に似てるから選んだってこと? それで自分の分も買っておそろいにしたんだ? なにそれかわいすぎか? ノアって俺のこと好きすぎじゃない?
「生まれてきてよかった……」
「んえ〜、大袈裟すぎない?」
口をついて飛び出した本音に、ノアは照れ臭そうに笑った。いや全然大袈裟じゃないけどな。
ただの幼なじみじゃなくて。親友だけじゃ足りなくて。欲深く、恋人になりたい。でも、関係性にとらわれない、なんの打算もないノアの好意が、ただ嬉しくて。これはこれで幸せだったりするのだった。
「あっ、そうだ、忘れるところだった」
ノアがいつも使っているリュックから取り出したのは、猫のぬいぐるみだった。
「これ誕生日プレゼント」
差し出された猫と目が合う。澄んだ青空を切り取って縫いつけたような青い目。毛色はグレー。手のひらからはみ出すぐらいの大きさで、カラビナが付いている。俺がグレーの猫を受け取ると、ノアはもうひとつ猫のぬいぐるみを取り出した。
「かわいくない? 僕も色違いで同じやつ買っちゃった。スクバにつけようと思って」
ノアが両手でゆるく持ち上げて見せたのは、俺がもらったのと同じデザインの三毛猫だった。
かわいくない? って言われても。かわいいのはノアだろ。食事の他にもプレゼントがあるとは思わなかったんだが? しかもイロチでおそろい? は? 最高か?
嬉しさが渋滞して声が出ない。黙り込んでしまった俺を見て、ノアは悲しげに眉尻を下げた。
「……あんまり好きじゃない? ていうか、よく考えたらこの歳でおそろいとかないか……」
「ある!」
「えっ!?」
「全然ある。ありだから。いいじゃん。好き。すっげえ気に入った。俺もスクバにつけるわ。ありがとう、大事にする」
思わず前のめりになってしまった。ないわけない。ありに決まっている。スクバにイロチでおそろのぬいぐるみをつけるとか、実質つきあってると言っても過言ではない。いや過言か。少なくとも他の友人知人とは絶対しない。でもノアとならありだ。むしろノアとしかしたくない。
興奮しすぎて気持ち悪いぐらいテンションが上がってしまったが、しょぼんとしていたノアは安心したようにほわっと笑った。
「ほんと? よかった〜」
プレゼントをもらった側の俺が喜ぶのは当然だが、贈ったノアの方が嬉しそうな顔をしている。
ノア的には、「おそろい」に深い意味があってのことではないのだと思う。小学生の時はランドセルにおそろいのキーホルダーをつけたりしていた。だからその延長。仲のいい友達の証。それでも嬉しい。
ノアは俺が手にしたグレーの猫を指先でつついた。
「この子さぁ、なんかれいちゃんぽくない? ぬいぐるみなのに目元がキリッとしててかっこいいな〜と思って」
「――そう?」
「まあ本物の方がかっこいいけど」
サラッと俺のことを褒めるノアに、ぐっと愛おしさが込み上げる。俺に似てるから選んだってこと? それで自分の分も買っておそろいにしたんだ? なにそれかわいすぎか? ノアって俺のこと好きすぎじゃない?
「生まれてきてよかった……」
「んえ〜、大袈裟すぎない?」
口をついて飛び出した本音に、ノアは照れ臭そうに笑った。いや全然大袈裟じゃないけどな。
ただの幼なじみじゃなくて。親友だけじゃ足りなくて。欲深く、恋人になりたい。でも、関係性にとらわれない、なんの打算もないノアの好意が、ただ嬉しくて。これはこれで幸せだったりするのだった。
