禁忌の雪恋〜声を奪われても君を守る〜

 和臣の中で、静かに、しかし確実に怒りが積み上がっていく。

 しかし、武虎が和臣の気持ちを読んだように、静かに目線を送ってくる。
(和臣、小笠原家では雪乃を守ってやろう。今は怒りをおさめろ)

 言葉にしなくても、伝わる感情を受け取り和臣は深呼吸し気持ちを落ち着ける。

 白川家の人間はあまりに雪乃に冷たい。
 抗議したところで、裏で雪乃をいたぶるだけだろう。

 和臣は空気を読み、怒りをおさめソファーに座り直した。

 ——雪乃を傷つける全てのものから守りたい。
 ——何度失おうとも。何度殺されても、彼女を守る事をやめたくない。

 その眼差しには、かつて恋人に向けた“誓い”にも似た強い光が宿っていた。

 雪乃は、茶器を盆を置くと立ち上がった。
 頭を深く下げ、震える声で告げる。
「失礼いたします」

 そのまま、誰の顔も見ずに応接間を出ていった。
 障子の向こうに消えた瞬間、忍びきれなかった涙がこぼれた。

(悔しい。あんな恥ずかしいところ、和臣様にも見られたくなかった)

 襟元を握りしめ、足音を殺して廊下を小走りする。
 息を吸うたび、胸が締めつけられた。